第7話 満点の血痕
栗木勇(くりき・いさむ)は、男だ。特殊能力捜査班の主任。他の班の主任に比べたら、若い方であるが、この班は高校生、大学生など平均年齢があまりにも低すぎる。そのためであろうか、栗木主任は老けて見られがちだ。
「くりきんとん主任!」
この声は、あいつだな。ったく
「俺がいなかったら、一生規制線の中には入れねーんだから、ちーとは俺のこと崇拝しろ。」
「早く行きましょ。」
と彼女は電話の主かつ直属の上司の話を切り上げさせた。
彼女を引き止めていた警官はあっけにとられ、自ら規制線を慣れた手つきでくぐって行く制服姿の彼女を目で見送っていた。
殺人事件の現場となる木嶋氏宅の玄関をくぐると、すぐ左手にドアがあった。ドアの向こう側には、リビング(今回の事件の殺害現場)。
死体と血痕。鑑識作業。これが現場の第一印象。考えてる暇はない。意識、思いはどんどん薄まっていく。人は自分の思いを誰かに気づいてほしかったりする。だから、思いを地上にばら撒きながら生きているんだ。
「鑑識作業お疲れ様です!少しずれてもらってもいいですか?死体の状況確認したいので。すみません。」
そういうと大きく息を吸った。ゴム手袋もつけない手で、血の海の上澄みだけをそっとすくった。彼女の目に映る血はどこか美しい星空のように美しく、彼女はその血を飲んだ。ゆっくり体に巡らせているかのようだった。
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