第31話 番外編 パイシーズ家の七夕
「綺麗ねー」
「そうですね。母様」
星空を見上げながら紅茶を飲んでいると屋敷からノアが何かを持ってやってくる。
「……ノア。それは?」
「? ススキですけど?」
――うん。見ればわかる。この国にあったのか地球から持ってきたのか知らないが、問題はそこじゃない。
「いや……なんでススキ? 七夕だよ? 十五夜じゃないよ?」
「織姫と彦星が餅つきする日ですよね?」
なるほど。お前は完璧に勘違いしてる外国人か!
その言葉をぐっと飲み込み、嬉しそうにしているノア達のやりたいがままにしておいた。
「ノアさん。これはどうするのかしら?」
「奥様。それは望みや呪いをかけて吊すのです。」
――おい。何かおかしいぞ。
「なるほど。呪術の一種なのね。東方の術かしら? ノアさんは博識ねー」
「それほどでもないですよ」
――ノアさんふんぞり返ってるよ。
「それにしても懐かしいです。あの二人が離れ離れになったのがこの間のように感じるのに」
ポツリととんでもないことを呟いたノアにエミリアは亡くなった友人を思い出したのだろうと思っているようだが、ノアが女神だと知っているリヒトは慌ててノアを引っ張って行く
「ノア! 母さんに女神だってバレるだろ!」
「あら。別に隠してませんよ?」
「自分を女神だって言ってる女は頭が可哀想な子だと思われるの!」
そう言われてノアは打ちひしがれている。
「ご、ごめん。可哀想は言い過ぎたかも……それにしてもノアは織姫と彦星を知ってるの?」
慌てて誤魔化すリヒトであった。
「もちろんです。あの二人を引き離したのは私ですから」
「え?! なんで?! ていうかノアって今何歳……」
「歳の話はいいです。……だってあの二人……イチャイチャしてばっかりで仕事しないんですもん」
「……は?」
「だってそうでしょう。私が毎日遅くまで残業して朝も早くから仕事してるのに毎日毎日ツヤツヤした顔して……」
――あ。これ地雷踏んだ。
「そりゃ私だって好きで独りなわけじゃないですよ? 仕事があるから仕方ないじゃないですか。後輩はドジだし主神はあんなだし……リヒトさん聞いてます!?」
「はいはい。聞いてますよ」
「それでね……………………」
――誰か助けてくれ……
リヒトの苦悩をよそに空では星たちが美しく瞬いていた。
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