第20話 番外編 天界での一幕②
「楽しそうじゃなぁ」
「そうですねぇ~」
下界でノアが楽しそうにしている姿を見ながら二柱は羨ましそうに呟く。
「わしも下界に行きたいのぉ。わしが本気を出せば世の問題などチャチャっと解決じゃて」
「ダメですよぉ~。そんな事したら先輩が怒っちゃいます~」
「確かにそうじゃの。ノアは怒ると怖いしのぉ」
思い出したのか顔を青くしている。
「それにしても主様~? 書類仕事は終わったんですかぁ?」
「なーに。休憩も必要じゃて。そういうレミルはどうなのかの?」
「私だって休憩は大事なんです~。さっきまで雨を降らせてましたから疲れたんですぅ」
「そうかそうか。じゃあもう少しノア達の様子でも一緒に見るかの。ほれ、飴でも舐めなさい」
「わーい! ありはとほざいまふぅ」
「いいんじゃよ。ホッホッホ」
コロコロと飴玉を頬張りながらご機嫌なレミルと満足そうな主神を見て、周りでデスクワークをしている天使達は「「孫と祖父さんかよ」」と心の中でツッコミを入れていた。
「おおう。あやつ風呂に入るみたいじゃぞ!」
「先輩ずるいです! あんなに大きなお風呂に一人で入るなんて! レミルも入りたいです泳ぎたいですぅ!」
「そんな事どうでもいいわい! ぬ! くそ! 小癪な湯気め! このわしの視界を塞ごうとするか!」
「あ~! 主様ダメなんですよ~! 乙女の入浴は覗いちゃいけないんですぅ!」
「うるさいわい! ぬぅ……こうなったら……神に仇なす不届きな湯気め! 神の息吹をくらえぃ!」
主神が大きく息を吸って吐き出そうとした瞬間。
「あ」
レミルが目を瞑った。なぜなら風呂の中からノアがバッチリこちらを見上げていたからだ。
「ぎゃぁぁぁぁ!!! 目が!!! わしの目がぁぁぁ!!!」
のた打ち回っている主神を見て、あちゃぁと頭を抱えるレミル。
その様子を見ていた天使達が何かを察したのか慌てて出て行く。
「あれ? みなさんどこへ行ったんですかぁ?」
レミルがキョロキョロしていると
「……さぁ。どこに行ったのでしょうね?……」
不意に背後から絶対零度のような声が響いてくる
ギギギと音がしそうな人形のように振り向くと……
「せ、せんぱい……」
髪からポタポタと雫を垂らしながらノアが立っていた。
「あなたも主様も随分楽しそうね。私も混ぜてもらっていいかしら?」
笑顔でそう言ったノアの目は全く笑っていない。
「えへへ~。お、おかえりなさい……先輩」
「レミル。あなたしっかり自分の星を管理しているんでしょうね?」
「も、もちろんですぅ! さっきまでちゃんと雨を降らせてたから日照りも……あ……」
みるみるノアの雰囲気が険しくなっていく
「あ…… って何です? あ…… って」
「……雨を止ませるのを忘れてましてぇ……洪水になっちゃいました」
えへへ~と笑うレミルにも、ブチっと何やら良くない音が聞こえた気がする。
「~~~~っ! このバカ! さっさと始末をつけなさい!」
文字通り雷が落ちたレミルは半泣きで「はいぃ~!」と叫びながら走り去って行った。
「そこでコソコソ逃げようとしているあなたもです!」
ビクっと主神の動きが止まる
「あ、いや、わしはちゃんと今日の仕事はやって……」
「へぇー。そんなに早く終わるんですか。私の入浴を覗く暇があるくらいに。へぇー」
ダラダラと汗を流す主神と睨みつけるノア。もうどちらが偉いのかわからない。
「そんなに暇があるなら私の仕事もやって下さいますよね? これで心おきなく下界にいられますわ。ありがとうございます」
「いや、あの、ノアの仕事までとなるとちょっと……それに出来れば早く帰って来てほし……」
「何かいいました?」
「いいえ! なんでもありません!」
顔を青くする主神を遠くから見て天使達は揃ってため息をついた。
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