№231
これって他人に話しますか? 誰も僕が話したって分からないようにできます?
――佐野さんはしつこいくらい確認してから話し始めた。
先日同窓会があって、地元に戻りました。参加者は全同級生の3分の1くらいでした。田舎なのでだいたい地方に出て帰ってこないんですよ。僕は暇だったし里帰りもかねて行ってきました。
同窓会では近況や、その日欠席した人の話になりました。僕も適当に答えていたら、別のグループからとある友人の名前が聞こえてきました。仮に佐竹としましょう。
「佐竹がなんだって?」
と話に無理矢理入ると
「あいつ東京に出てバリバリ働いてたよ」
って。まさか佐竹がそんなはずない、と思わず言ってしまいましたが、誰も気にせず「あいつは昔から優秀だった」なんて言って盛り上がっていました。
同窓会から戻って、しばらくすると交際している彼女から真剣な話があると呼び出されました。そして振られました。
「他に好きな人ができた」
申し訳なさそうにしている彼女でしたが、僕が怒りを抑えつつ相手を聞くと、嬉しそうに話し始めました。
休日に彼女が友達とご飯を食べていたら、友達の同僚がたまたま通りかかり、同席することになったそうです。その同僚が話している内に、僕と同郷と知り、さらに盛り上がったとか。そして親しくなり、惹かれていったそうです。
「あなたの知り合いだし、先にはっきり別れて、それからちゃんと佐竹君に告白したい」
彼女の口から出た名前に驚きました。また佐竹。佐竹の訳がないんです。でも彼女が言う佐竹の特長は、間違いなく同じ人物を指していました。
僕が何を言っても彼女は信じてくれなくて、去って行ってしまいました。
佐竹と最後に話したのは、僕が上京してすぐです。佐竹が後から家出同然に上京し、助けを求めてきました。1ヶ月以内に仕事を見つけて出て行くからそれまで協力してくれって。佐竹は両親に家を継げと言われて嫌になって出てきたそうです。
軽い気持ちで受け入れましたが、ただの友達と同居って難しいですね。すぐに駄目になりました。普通に追い出したら良かったんですけど、頭に血が上って、気がついたら首を絞めていました。
幸い誰も佐竹が僕を訪ねていたことを知りませんでしたし、山に埋めた死体はこれまで発見されてなかったんで事件にもならなかったんですが。
これで、佐竹が死人だって証明できますよね。
同級生にも、彼女にも。
いやぁ、適当に埋めたから掘り返せるか不安だったんですけど。
意外と出てくるものですね。
状態は悪いし、臭いけど。
こうやって死体を晒してやれば生きてる人間の振りもできないでしょう。
ね?
そうでしょう?
――ちょうど話が終わってすぐ、私が呼んでいた警察が到着した。
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