№118
――判官さんは大学生のとき、合コンで彼氏ができたそうだ。
私たち以外の参加者もいい感じで、よく女子3人、男子3人で遊びにいってました。三年生の夏、その日も6人で遊びにいっていたのですが、帰るときに、もうちょっと一緒にいたいねってことで近くの心霊スポットにいくことになりました。それは山の中腹にあるトンネルで、ほとんど使われてないので昼間でも寂しいところだそうです。私たちは夕暮れ時にそこに向かいました。車2台に別れて、私と私の彼がそれぞれ運転し、山の麓から徒歩で行く予定でしたが、車を止めたとたん背中を氷が這うような寒気がして、車から出れなくなりました。私の車に乗っていた他の女の子達も「酔ったのかな、気持ち悪い」「目眩がする」と車から降りられず、窓を開けて男の子たちにそれを言うと「本当は恐いんでしょ?」とへらへらとからかってきました。そして男の子3人でトンネルにいってしまいました。彼氏なんだから、少しくらい心配してくれてもいいのに……と思い、ちょっと体調も回復したし、先に帰ることにしました。ちょっとしたイタズラのつもりで。他の女の子達も賛成してくれて、地元のファミレスでお茶をすることに。その時には3人とも完全に回復していて、「何だったんだろうねぇ」と笑いあっていました。しばらくして私の携帯電話に彼から電話がありました。やっと気付いたかと3人でニヤニヤしながら通話に出ました。少しノイズが入っていたと思います。彼は予想していた「どこにいるの?」「何で帰ったの?」ということは言わず「ごめん、帰れなくなった」と。私は他の女の子と目を会わせました。遭難?と多分3人とも考えてゾッとしていました。しかし、その後「俺たちはもう戻れない」と彼は呟き通話が切れました。私たちは慌てて近くの警察に駆け込みました。しかし携帯電話が繋がることと、私たちが彼らを置いてきたことから「ふられたんじゃない?」とまともに聞いてもらえませんでした。
次の日、居ても立ってもいられなくなって兄に頼んで一緒に例のトンネルに行ってもらいました。トンネル付近は静かで、誰もいないように思えましたが、トンネルの中に三人が体育座りをして眠っていました。声をかけましたが眠そうな顔でこちらを見るだけ。一日しかたっていないのに3人ともげっそりとやつれていました。救急車を呼んで3人は入院になりました。彼氏は特に精神的なショックが強かったようで、その後退院したという話もないまま連絡が取れなくなりました。あのトンネル、今だにネットで話題に上がるんですよね。同じような被害者、今までにもいたけど事件にならないだけじゃないなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます