№55

学生の時よくゲームを作って友達と遊んでいました。その中の、一番良くできたものをフリーゲームとして頒布したんです。それが始まりでした。

――源田さんは噴出した汗をタオルで拭きながら話し始めた。

 ホラーゲームです。基本は探索ゲームなんですが、ホラーテイストで、ある条件をクリアしたら登場する幽霊と話が出来て、ストーリーが見えてくる。ストーリーは知らなくてもゲームをクリアすることはできましたが、やり込み要素的な感じで、ダウンロードしてくれた人の多くはコンプリートすることに躍起になっていました。友達としめしめと笑っていたものです。ある時「この霊にはストーリーないのか?」「この霊に話しかける方法だけわからない」というメッセージを続けてもらいました。「この霊」というのは同じキャラクターで、これはバグか何かかと、すぐさま確認しました。特に異常は見られなかったので、もう一度ダウンロードするように促しました。それ以降その人たちから何も言ってこないので、解決したのかなと思っていたのですが、その数週間後、僕たちのゲームが「呪いのゲーム」という噂が流れだしました。ホラーゲームなんで、そう言った噂も人気のうちだと最初は喜んでいたのですが、だんだん責められるようになってきて……。というのも呪いと言われるものが、先ほど言った幽霊に関するものなんです。その幽霊がリアルに出てくると。話しかけた者は失踪するとか黄泉の国に連れ去られるとか。なんでこんなゲームを作った、わかっていてバグを修正しなかったのかなど、炎上してしまいました。僕はそういう心霊的なものは一切信じていなかったので、炎上はそれなりにつらかったのですが、一時のことだろうとなんとか凌いでいました。ある時一緒にゲームを作っていた友達の一人から連絡がありました。公衆電話から掛けてきたようでした。どうしたのかと聞くと「あの霊が出たんだ」と言います。見間違いじゃないのかと問い質すと、今すぐそこにいると。そして今から話しかけてみると電話を切られました。実はゲーム内でその幽霊と話す条件が「公衆電話を使った後に話し掛ける」ことだったんです。それ以来その友達が行方不明です。他の友達が異常に怖がったことと、僕自身いろいろ疲れてしまったため、そのゲームはダウンロードを停止し、データもすべて消しました。消してしまったとき、怖がっていた友達もさすがに未練があったのか少し泣いていたようでした。消したことで、嫌な噂が流れても応援してくれてた人がいることがわかったし、今もなお好きだったといってくれる人もいます。だから作らなければなんて思いませんし、またゲームは作りたいと思います。

 でも、不思議なんですよね。ゲームを一緒に作った友達、皆、あの後も制作意欲を見せてくれてたんですが、今では誰とも連絡が取れないんですよ。

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