№25
あなたは霊感がありますか?
――野淵さんは私に問い掛けてきた。
……そうなんですね。でも本当に霊なんているんでしょうか? 私は見たことがありませんし、人魂だってカマイタチだって科学で説明がつくんでしょ? 今まで説明がつかなかったことだって科学の発展で説明できるようになるんじゃないですか? 私の友人にもいました、霊感がある女の子。成人しても変わらなかった。「ここは子供がいっぱいいる」だの「あの子の背中にお婆さんが」だの、会うたびに言っていました。最初は友達が少なくてかまってほしいだけだと寛容に見ていたのですが、いくら友好を深めても言い続けるのでうんざりしていました。そんな性格だから友達がいないんだってはっきり言ったこともありますが「見えるものを見えるといって何が悪い」と逆切れというか開き直りというか……。「じゃあ心霊スポットに行って除霊して来い」と挑発しても「それは専門家じゃないとできない」と逃げます。
転機になったのが自称専門家との出会いです。たまたまコンパで出会ったのですが、連絡先を交換しました。そして友人に紹介しました。3人で会って2人が見える幽霊について違うことを言えば「やっぱり嘘じゃん」って追い詰められると思ったんです。3人でお茶をしていたらやっぱり友人が「この店、霊道だね、あんまり長居しない方がいい」とか言いました。専門家がなんて答えるだろうと目を向けると、専門家の目がギラリと光りました。そして突然怪談を話し始めたのです。それは彼自身が仕事で出会った死霊の話でした。滔々としゃべりだしたので私たちはしばらく動けませんでした。しかし友人は途中で私に「もう帰ったら?」と言いだしました。二人がいい感じになったなんてことはありません。その時友人の顔は真っ白でした。私は意味が分からず、ただ気持ち悪くて一人で帰りました。
その日から友人と連絡が取れなくなりました。専門家に連絡したら「いい人を紹介してくれてありがとう」と言われました。付き合い始めたのかと聞くと「ヨリシロが欲しかったんだよね」と。どういうことかわかりますか? 私も調べてみて予想はできましたが、もう考えるのをやめました。友人が死体で発見されたんです。ごく普通の商店街に彼女は倒れていました。なぜそこにいたのか、なぜ死んだのか、なぜ倒れて死ぬまで誰も気づかなかったのか、今でも判明していないようです。
私は、さっきも言ったようにもう考えるのをやめました。だから、この話を手放すために私はここに来たんです。だって考えて、結局、心霊現象が原因だって結論が出たら、私が見捨てたことになるじゃないですか!
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