№12
僕、いつもは早寝遅起きなんです。はい、夜も朝も眠たくて。
――はにかむように笑った志田さんは近所の高校の制服を着ていた。
だから学校から帰ったらすぐに宿題をするし、寝る前に次の日の支度をしてギリギリまで寝れるようにしてるんです。ただこの前の期末試験は内容がどの科目も難しくて。だから前日はもう完徹してでも勉強しておこうって初めて徹夜で勉強することにしました。
数学の計算をやり直していた時、窓がトントンって鳴ったんです。風かと思って気にしていなかったけど、次に「おーい」って間近で呼ばれたんです。窓から誰か来たのかとカーテンを開けたら、そこには僕がいました。僕が今にもノックしようと軽く握った拳を振り上げたところだったんです。外にいた僕はぽかんと口を開けたまま徐々に空気に解けるように消えてしまいました。僕は窓を開けて外に顔を乗り出しましたが、やはり誰も居ません。寝ぼけて幻覚でも見たのかと思いました。だけど窓を閉めた瞬間、部屋のドアが開きました。そして「はーい」と言いながら僕が入ってきたのです。さすがに叫びました。すると向こうも肩をすくめて怯えるようなしぐさを見せ、また煙のように消えてしまったのです。ドアは自然に閉まりました。慌てて開けて部屋の外を見ましたが誰も居ません。
もう訳が分からなくて勉強どころではなくなりました。あれがドッペルゲンガーというものなんだろうか。見てしまった僕は死ぬのか。寒気がしたところでまた窓がノックされました。そして「おーい」という呼び声。私はカーテンを開かず外の気配をうかがいました。「はーい」またドアが開きました。そして私を見て消えてしまいます。もう耐えられなくなって、僕は布団にもぐりこみました。そしたらまた、トントン「おーい」ガチャ「はーい」。さらに窓が開く音、窓が閉まる音。息をひそめて待ちました。自分の心臓の音しか聞こえなくなったので、僕はそっと布団の隙間から顔を出しました。
のぞき込まれてましたよ。二人の僕から。その瞬間失神してしまい、気が付いたら朝でした。部屋はいつもと変わらず。ドアも閉まってるし窓も開いてなかった。でも、それ以来その部屋は使ってません。
――志田さんはふーっと息を吐いて、私がいれた茶を飲んだ。
もしかすると今までも僕が寝ている間にあの二人は僕の寝顔を見ていたのかもしれないんですよね。そう思うと不気味で気持ち悪くて。今の部屋は鍵もかかるし窓もない。……例の部屋? 姉が使ってますよ。姉もまた早寝遅起きなんです。
――志田さんは健康的な白い歯を見せてにかっと笑った。
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