第15話 ブーツを作る
「タケルさん、ストレージに有る皮を縫う針使っても良いデスか?」
まだ、寒さが残る頃の話である。
「あぁ、いちいち断らなくてもある物は使っちゃって良いよ」
八尾は870の銃身にこびり付いた鉛を落としながら答えた。
べるでは何やら革を切っては接着剤を塗り、縫い始めた。
八尾は何が出来るんだろうと思いながらも、洗い矢を何度も通し少しずつ落としていく。
ふと横を見ると、べるでは革に専用の縫い針を刺してぐりぐりとしているが、革が固くて苦戦している。
「あぁそうだ、革を縫うなら先に穴開けた方が楽だよ、フォークみたいな奴があったでしょ?」
「これ?デスか?」
と取り出したのは、菱目打ちだ。
八尾は剣鉈の鞘を作ろうと一式購入したのだが、革の鞘は滑落したときに刃で破れて、腹を刺すから止めろと言われてしまい、使わずじまいでいた。
「これで先に穴を開ければ楽だよ」
べるでは分厚い木の台に革を置き、木槌で上からコンコンと叩き、糸を通す穴を開けていく。
一通りパーツがそろった所で、鳩目を打っていく。
作業は深夜まで続けられた。
翌日、木の板に何やら模様を掘っていた。
そこに靴底補修剤を塗り始めた所でやっと何をやってるか判った。
靴だ。皮のブーツを作ってるんだ。
その後、靴底補修剤に砂とか灰を混ぜて実験をしていた。
どうやら靴底自体を作るのが上手く行っていないようだ。
八尾はストレージの靴をバラシて使う事を提案すると、ここ数日、難しい顔をしていたべるでの顔が明るくなった。
「タケルさん、凄いデス。そんな手があったのデスね。」
大きさが合わないので、二回りほど周囲を削る羽目になったが、なんとか形になったようだ。
昼前に野良仕事を終えると、べるではウキウキと付近の森に散策に出る。
一人だと危ないのでポチがそれに続く。
日が暮れる前には二人とも満足気に帰って来る。
夜はアンの靴製作に取り掛かっている。
「オネェサマ、靴が出来たら一緒に散策しましょう。」
「散策っ?とれっきんぐ?とかかしらっ?」
「南の斜面を超えた所に藪が有って、鹿とか寝てるのデス。可愛いデスよ」
「え~斜面を超えるってきつそうじゃないっ?それに鹿が寝てるって群れっ?」
「慣れればそんなにキツく無いデスよ、鹿は結構たくさん居ますデスよ」
「近くに鹿の群れって、畑大丈夫なのかしらっ? ねぇタケルっ?」
「どうなんだろう、こっちに来る群れだったら危ないかもしれないね」
「通いの足跡は無いみたいでシタが・・・多分良い子の群れなのかと思いマス」
「まぁ様子を見るって事で良いかな?で、アンも散策いくの?」
「あ、あたしは遠慮しておくわっ。絶対キツそうだしっ 卵達の面倒もみないと
でもハンター試験行くときはそれで行くわっ。楽しみにしてるわねっ」
結局、アンと八尾のブーツは型を合わせるのが大変と、木で足形の製作から行われた。
そして、なんとか町へ行く数日前に二人分のブーツは完成した。
・・・
「ねぇ・・・足形だけど、指まで作る必要があったの?」
足形にはしっかりと指や爪の形まで彫り込まれていた。
意外と凝り性なべるでであった。
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