第6話 べるでの寝床

今は冬、1月も終わりとなると冷え込みは相当厳しい。

囲炉裏にはまだ火が残っているとは言え、隙間風が通る村の家は寒い。

寒さと言うより、体から出る遠赤外線が周りに吸い込まれる?いや

もう吸い取られていくような感覚である。


夜、寝室の布団に潜り込む。


寝室は狭い。4畳と押入れと言ったところだ。

箪笥もそこにある。

実質3畳、布団が二つで一杯だ。


布団もさほど豪勢なものではない。つまり寒い。

アンと八尾は布団を重ねて、くっ付いて寝る。

アンの体温は高い。見かけ10歳位と言う子供の体だからだろうか?

そこには暖を取る為と言う意味以外の事は何もない。

くっ付いて寝ると暖かいのだ。

たまに蹴られるが、寒いよりは良い。


べるでは、ストレージに入って寝る。

ストレージで寝る?

そう、「おやすみなさい」と言って画面に吸い込まれていく。

落ち着くらしい。静かだとも言っていた。


八尾は試しに一度入ってみた。

もちろん、アンとべるでが見ている前で。

入ったというより、アンに仕舞われたように見えた。


最初は怖かった。

体の感覚が何もない。

暑くも寒くもない。

音も何も感じられない。

白く、ぼーっとした視界は霧の中のようだ。

声も出ない。体は無いのか見えないのか・・・

そのうち落ち着いてくる。

果てしなく無の状態だ。

もうどの位入っているのだろう?

数時間、いや、数日?一年?いやもっと?


ふと視界が戻ると、アンとべるでが見つめていた。

「タケル、大丈夫?」

「大丈夫ですか、マイロード。 これは何本にみえマスか?」

べるでは目の前に指を出す。


入っていた時間は、たった30秒足らずだったらしい。

随分長い事入っていたようにも思える。


「随分長い時間入っていたように感じたよ。結構落ち着くもんだねぇ」


「普通の人が入ると出たときは泣き喚いて出てくるわよ?

長く入れちゃうと下手すると廃人よ、私だってそんなに入りたいと思わないもの」

5・7・5しか喋れなくなるらしい。


八尾がそこを嫌わなかったのがうれしい「べるで」であった。

「私は、結構あそこは好きなのデス」


朝、今日もべるでは端末から「おはようございマス」と元気に出てくる。

出てくる姿はちょっと怖い・・・と八尾が思っているのは秘密にしておこう。

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