第4話 ミラと与作と手仕事と

おらミラだ。

最近出番が無いから、ちょっとコボレてみるだ。


冬の間は手仕事をしてるだ。

春のしらせにロハスのおっちゃんさ行商にくるだぁ。

その時に、こうて貰うだよ。

もうそろそろ時期だで、頑張ってるだ。


手仕事っちゅーても色々あるだ。

藁で作る草履に草鞋、ミノにムシロ。

藤、アケビの蔦で編んだ籠、竹で編んだ大き目の籠

おらがやっているのは竹籠作りだ。



与作が今頃の時期に竹さ切って、囲炉裏の上さ干しておくだ。

それを割って薄くしたのんをまたひと夏ほど干すだ。

そーすっと竹がきれぇーな飴色になるだよ。


おらはそれを冬の間ずーっと編んでるだ。

与作が割った竹はつるつるでな、編んでいても手にささくれが刺さったりしねぇだで

ほんに良い籠になるだよ。ロハスさんも高値でこうてくれる。


与作は手を掛けすぎじゃ とおどは言う。けんど満更でもねぇようだ。

めぇに、おどとヤハっつあんが酒ば呑んだときに、与作さ婿に来させぬか?

なんて言うとったけど、本気なんじゃろか?

与作さその話ば伝わっとるんじゃろか?


などと思っているだけで顔が火照って来る。


「ごめんなんしょ、ミラ、竹ば持ってきたで- そろそろ無くなる頃だべ?」

ガラガラと引き戸を開ける与作。


「ミラ?どげばした?ずいぶんと顔があこうなっとるぞ」

すっと寄って、おでこをくっ付ける与作。


「あ、あわわわ」

さらに赤くなる顔


「やっぱちいと熱があるじゃねぇべか?

寝て無きゃダメだぁ 暖ったこうして寝ろ」


囲炉裏の間の隅に竹を置くと与作は帰っていった。


おらは春になったらシヤルスク町に奉公さ行くだ。

5年の奉公だで、戻ったら18だ。

与作は待っててくれるだろうか?

おらだけ・・おらだけきれぇなべべ着て旨めぇもん喰って・・・怒らねべか?


5年かぁ・・・・


ミラは遠い目をして囲炉裏に焚き木を足した。

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