第2話 クレー射撃
まず、安全について
初心者は銃を上に向けてから前方に腰を曲げる人が多いが、必ず指は銃口が前に向いてからにしてほしい。
たまに射台の軒先に暴発の弾痕など見かける。
弾は射台から出る際には抜く、射台でも弾が出ても問題ない方向になってから用心金に指を入れる。
これだけで事故は防げるのである。(まぁ射場の事故は滅多にあることでは無いが)
ライフル射場の場合は、的を変える人が居る場合、(大抵ブザーやランプが点滅する)
銃の機関部を開放し、銃架に置く。的方向に向けて置かない。撃ち終わっても同様である。
弾が入ってなければタダの鉄パイプである。叩かれなきゃ安全だ。
クレー射撃とは大別すると2種類の競技に分類される。
前方15mの放出口から左右中央と3方向に飛び出すクレーを撃つトラップ射撃。
半円に設置された射台から左右に放出されるクレーを撃つスキート射撃。
よく言われる話だが、カモ撃ちの練習はトラップ、キジ等の練習はスキートが良い
等と言われるが、どんなもんだろうか?
八尾が思うには狩猟の練習ならスキートが良いと感じる。
いや、猟場で散々外した経験からそう思うのだろう。
八尾はトラップ射撃を最初にやった。
トラップ射撃とは、横並びになった5つの射台を順に周り、前方に飛び出すクレーを撃つ競技だ。
「あー」とか「はい」とか「おー」とか、掛け声は色々であるが、声を出した瞬間にクレーが放出される。
左右中央、どちらに飛ぶかは判らない。
但し、一ラウンド25枚、つまり1射台だと5枚、必ず右2枚、左2枚、中央1枚と言う決まりがある。
最後の一周は覚えていれば方向が判るのである。
まぁ出る方向が判ってもあてられるとは限らないのであるが。逆に外してしまう事も多い。
クレーは約60m~70m位飛ぶ設定になっている。つまり速い。
クレーを直接狙って撃っても、弾が届くころにはクレーはその先を飛んでいる。
クレーの先を撃たないと当たらないのだ。
しかもクレーの速度は射台毎に、いや同じ射台でも左右で違う。
外したとする。撃った弾は見えない。クレーの先か後か、上か下か? ・・・判らない
この実包、空砲だったんじゃね? よく言う冗談である。
でたらめやっても中る。いや、むしろ初心者はでたらめに撃った方が中る。
これは狙いこんで同じように外すことがあるのである。
上手くなる人ほど初心者の頃は良く外す。バラツキがある人ほど12~15枚撃ったりするのだ。
バラツキはなかなか治らないので、20枚にかかかる辺りでスランプになる。
クレー射撃で大切な事、それは一ラウンド25枚だと言う事である。
体に負担が掛かるような構え方や撃ち方だと25枚持たない。
結構ハードなスポーツである。また、構えにくい方法だとバラツキが生まれる。
6人で回ると約20分から25分間、集中しなければならない、構えが悪いと微妙な違いから集中力が乱れる。
兎も角、コールする。
「はー」
15m前方から左に飛び出すクレー。
一瞬間をおいて銃を振りだす八尾。
クレーに追いついて照星がクレーに付く瞬間引き金を引く。
銃はそのまま振っている。
弾がでる。弾とクレーの飛翔ラインが重なり割れる。
的中である。
つぎ、コールする。
「はー」
15m前方から同じく左に飛び出すクレー
アドレナリンが出て反応が早くなる八尾。
そのまま銃を振りだす。
クレーには早々に追いつく。そのままクレーと照星が合致している。
引き金が引かれる。弾がでる。その時照星とクレーは合わさっている。
弾はクレーがその時あった位置に飛ぶ。届くころにはクレーは1~2m先を飛んでいる
そのまま二の矢(二発目)を引く。同様にクレーの1~2m後に弾が飛ぶ。
「ぱふっ」 失中の合図だ。
これが狙い込みすぎと言うものだ。他にも失中の原因はいくらでもある。
それを掻い潜って満射をねらうのだ。
弾は50cmから1mの大きさに広がる。
それが広いか狭いかは個人の見識の差である。
たとえば、あなたが今PCを使っているとして、マウスポインタを下に置いて、右上
左上のアイコンを0.5秒でクリック出来るだろうか?
25回やったら何回成功するだろうか?
つまりはそういう事である。
満射(25枚中25枚全部撃破)
満射を狙うと苦しい、苦行だ。一枚一枚にプレッシャーがのしかかる。
のどは乾く、手は震える。膝は動かなくなり、つま先を浮かすことすら出来なくなる。
5枚、10枚、残り15枚、気が抜けない。15枚、半分すぎた。もういっそ自分から外してしまおうか?
次は外してしまうかも・・・20枚。残り5枚
あと4,3、この辺りでは鼓動が邪魔だ。そしてその鼓動が感じられるぐらいだとこの辺りで外す
2、1・・・パチパチパチ 拍手で囲まれる。あれ?これで終わり? 実際そんな感じである。
大会だとこれを4回繰り返すのだ。
国体予選は6回だ(ったかな?)
だが国体選手になる訳でもない。
満射は狙うものであって義務ではない。
射撃が出来るという幸せを噛みしめて”楽しんで撃て” さる偉い人が言った。
おさるさんが言ったわけではない。
バイクの免許取ってツーリングに行く。
ゴルフクラブ買ってラウンドしてみる。
それぐらいのものである。ただ許可に警察が絡むだけである。
だって銃だもの、仕方ないと言えば仕方ない。
所持した後は、単に練習に通うだけでなく、大会に出ると面白い。
点数はさほど関係ない。旨い下手じゃないのだ。自己流から抜けられる、安全面においても。
出来れば銃砲店の大会だけでなく、クレー支部に入るとまた広がりがあって面白いのだ。
あれ?八尾はどこ行った?え?あ?帰った? 帰った?帰っちゃったか・・・
あれ?アンなんでここに?
「ちょっと、このばかっ こぼれ話どころか、これは枠外よっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます