ショートショート

ミタ

第1話 暑いのが苦手な男

タナカは暑さが苦手だった。

普通なら少し肌寒いと思う温度でも、すこし動けば汗が滲み出てしまう。

少しでも汗をかき始めると苛立ちが表に出やすいタナカを敬遠する人間も多かった。


ある時、熱に関して研究している人間に出会う機会があった。

「私は暑くなるのが本当に嫌でね」

「そうならなくなる薬ならありますよ」

タナカは半信半疑ながら、物は試しと薬を分けてもらう事にした。


数日後の猛暑日にタナカを訪ねた友人はその様相にひどく驚いた。

なにしろタナカの身体から汗が滝のように流れているのに平然としているのだ。

そんなに薬が効いたのかと驚く友人に対して

「もうそんなに熱くなれないよ」

タナカは無気力そうに答えた。

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