最強の二人はこの世界のために対立する

@kaikiumi

プロローグ 最初の戦い

 私は勇者として、この世界に来た。

 どうして私が選ばれたのかは分からない。

 でもどうして私が呼ばれたのかは分かる。

 この世界は腐っている。

 狂っている。

 だから私は人を殺す。

 この世界をより良いものへ変えるために。


「この!」

 私に背反する存在。

 マコトと彼は名乗った。

 俗に言う魔王。私と同じ日本人だ。

「どうして分からないの」

「どうして君は分からない」

 マコトは詠唱魔法を唱えた。

 この世界において魔法は絶対の力を持つ。普通の人間がモンスターに勝つにはこの魔法しか方法がないからだ。だからこそ人間は人生とともに語学、社会学、農学を身に着けるように魔法学を身に着け、活用するのだ。

 私に魔力はない。

 マコトには膨大な魔力がある。

 だから私は膨大な力を手に入れ。

 だからマコトは力がない。

 マコトが放った魔法。巨大な炎の渦が辺り一帯を灰の山へと変えていく。ただの渦ではない。竜巻のように、その渦は地形を変えていく。天災と呼ぶにふさわしい。

 それを私は一振りで振り払った。

「あなたの魔法はチートじゃないかしら?」

「君の力はチート染みているな」

 マコトは召喚魔法を唱える。

 地面から現れたそれは巨大なカバの姿をした二足歩行のモンスターだった。そのモンスターが手にあるハンマーを私目がけて振り落とす。

 それを片手で受け止める。

 その隙をマコトは炎の玉、いや玉と簡単な言葉で言い表せないほど巨大な物だった。モンスターを巻き込んでの攻撃。私はモンスターを押し返すと、すぐに上空に飛び回避した。

 回避が間に合わなかったのか、私の服の一部が焼け焦げ、そして灰となって落ちた。

 地面に降り立った瞬間、私は思いっきり地面を蹴る。

 そして、マコトとの距離を詰めた。マコトに剣を振る。その剣はマコトの頭をかすめる。つかさず二撃目。

 しかし、その前にマコトは魔法の詠唱が終わった。

 私の剣が受け止められる。

「君に一つ聞きたい。世界とはどうあるべきだ?」

「この世界は善のために悪を滅ぼすべきだ」

「違う。善のために悪を許すべきだ」

「違う。違う。違う」

 その言葉の直後。マコトが私に指を向けた。巨大な力の衝撃波。この魔法によって吹き飛ばされた私は、地面を転がる。その衝撃で剣が彼方へと飛んでいく。

 態勢をすぐに戻す。

 そして。


 私は初めてで地面を蹴った。


 地面が砕ける前に私は前へ前へと進む。

 驚異的な速度でマコトとの距離を詰めると、私はスカートの中から小さな短剣を取り出し、そのままの勢いでマコトの首を掻っ切った。

 真っ赤な血が辺りに散らばる。

 マコトはあり得ないと言った表情で私に聞いてくる。

「まだ力の底を出していなかったのか」

「それはお互い様でしょう?」

「そうだな」

 マコトの傷はみるみるうちに治っていく。

 一撃で絶命しなくては、いやしたとしてもマコトを殺すことはできないだろう。それだけ、魔法とは厄介なものだ。マコトは傷が治ると、不適な笑みを浮かべた。

「しまった!」

 マコトが詠唱を始める。

 それが転送魔法であると分かると、私はすぐにマコト目がけて突進した。

 しかし。

「じゃあな」

 私の攻撃は間に合わない。

 マコトはどこか知らない地へ逃げた。


 これが私とマコトの最初の戦い。

 マコトが逃げたことにより、初めての戦いは私の勝利となった。

 ただ、苦い気持ちが私の中に残ることとなった。

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