第45話 純白の光

 



 ◇ ◆ ジョニアック視点 ◇ ◆




「闘技、不動要塞!!」


 

  --ゴォォォォォォォッガガガガガガッ


 ぅおああああああああああああっ!!


 咄嗟に発動した闘技が何とか間に合った。

 上空から放たれた攻撃魔法が、僕達を避けて地面をガリガリと削っていく。


  --ガガガガッ

     --ガガッ...


「...っふぅ」



 よかった...。何とか攻撃を凌げたみたいだね。みんなに怪我はないみたいだ。

 闘技を一回使っちゃったけど、今のはしょうがないよね。


   --さてと...


「エル」


「は、はいっ」


「敵は何処に居るかわかる?」


「ええと、どうやら真っ直ぐこっちに近づいて来てるみたいです」


「ふむ...」



 第二撃目がくるかと思ってたけど、こっちに向かってきてる?

 遠距離から攻撃を続ければ優位がとれるはずなのに何で...。


  --来たっ!


「ほーっほっほっほっほっ」



 ......。


 ...。


 えーっと......。


 どうしよう、もの凄く見覚えがある。

 でっぷり太った体型に、癖のあるくすんだ色の金髪。あの人を見下したような感じのタレ目は......。



「こ、国王!?」


「そぉーである、余は国王であぁるぞっ?! さぁっ、愚ぅ民どもっ! 余の前に跪くが良いのであるっ!!」


「豪炎の神域より来たれ! ファイアーランスっ!!」


   --ゴォォッ

      --ドゴォォッ


「ニナっ!! 相手は一応この国の王様なんだけど!?」


「知らないわよ、先に攻撃してきたのはアレでしょ?

 それにこの魔力の感じ、もう人間じゃないわよ?」


「えっ...? そ、そうなの?」



 この魔素濃度だし、魔物に変質しちゃったって事なのかな?

 でも、それにしては意識がしっかりしてる様に見えるんだけど...。



「この感じは不死者(アンデッド)...しかも上位種ね

 誰がやったのか知らないけど、魔素にアテられただけじゃコレにはなんないわよっ!」


「ほーっほっほっほっ、温かい出迎え大義である、これは褒美なのであるっ!」


   --ゴォオオオオッ


「泡沫(うたかた)に揺蕩(たゆた)いし精霊王の庭園よ、今こそ我が前に顕現し悪しき全てを拒み給えっ! エレメンタルマジックシールド!!」


    --ドゴォォッ


 国王が放った攻撃魔法を、ニナの防御魔法が完全に防いだ。

 そして相手には隙が生まれて、攻撃するなら此処が絶好のチャンス!


 相手は空に居るけど関係ない!



「はぁぁぁぁっ」

 

   --ブオンッ


 体を全開まで捻った後、全ての力を腕に込めて、真っ直ぐ敵に向かって大盾(タワーシールド)を投擲した。


     --ジャララララララララッ


 大盾(タワーシールド)と僕の腕を繋ぐ鎖が伸びて...。


   --ガゴンッ


 目に見えない壁に阻まれて弾き飛ばされた。


    --ジャラララララ...


 けどまだだ!


 鎖を思い切り引っ張ると、遠心力を乗せて今度は真横からもう一度!!


   --ゴッ


 よしっ!


 今度の攻撃は防がれずに国王の体へと直撃したっ。後は盾ごと建物の壁へと叩きつける!!



「はあああぁぁぁぁぁっ」


   --ガガガガガガッ

         --ゴガァッ


 --ガラガラガラ...


「っふぅ......」



 国王は建物を突き抜けて、砂煙の中へと消えていった。


  --ジャラララララ......


 鎖を引っ張って大盾(タワーシールド)を回収すると、反撃を警戒する為に砂煙の奥をじっと見つめる。


 今ので倒せてればいいんだけど...。


  --ガララ...


「くっ」

    --ガゴゴッ


 砂煙が揺れて咄嗟に盾を構えると、もの凄い衝撃が体の芯まで襲いかかってきた。


   --ズザザザザッ


 そのまま体ごと後ろへと押されて、足が地面を削って滑っていく。 



「ウインドカッター!!」



 そんな僕の真横を抜けて、詠唱を終わらせたニナの魔法が砂煙の中へと直撃する。


  --バシュゥゥゥゥッ


    --ブォゥッ


 風の魔法の影響で舞い上がっていた砂煙が吹き飛ばされて、瓦礫から起き上がろうとしている国王の姿を晒しだす。


   --シュッ

  --シュッ


 その瞬間を待っていたエルが、すかさず矢を放って肩を壁へと縫い付ける。



「ぐぬぬぬ、国王たる余になんたる無礼っ! ゆるさんのであるっ!!」


  --ぐぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉっ


「これはっ...」



 国王の威圧感が膨れ上がると、体がボコボコと膨れ上がっていく。


  --ブチッ

    --ブチッ


  --ガラガラガラッ


 貫かれた肩を全く気にせず立ち上がると、瓦礫の中から空に向かって浮かび上がっていく。


  --ボゴッ

     --ゴリッ


   --グチュッ


 体から骨が突き出して、身体がどんどん異形の者へと変化していく。



「ぐほほほほほほっ、余にしたことを悔いて死ぬがよい」



 ま、まずい...。

 この威圧感は圧倒的格上の相手だ。



「みんな、下がって...

 僕が殿をするから逃げるんだっ」


「ぐふふふふ、逃がすわけ...」


 --ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

   --バシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ......ゥゥン...


「なっ......」



 国王の後ろに広がる景色の奥。そこにたった城から、空に向かって真っ白な光が突き刺さった。


  --ズゴォォオンッ...


「...はっ?」



 眼の前で城だったものが崩れ去っていく。



「なぁぁぁっ、よっ、余の城がぁぁっ!!」



 世界が変わった......。



「なんだ...コレ」



 息が苦しい...。


 城から何かが飛び出して空の上へと舞い上がった。

 傾きかけた太陽に照らされて、それは真っ白にキラキラと輝いて。


 城へ向かって真っ白な光を吐き出した。

 反動で純白の羽が空へと舞い散る。


 そしてその光が城を貫こうとした瞬間、城から黒い蝶が吹き出して白い光を押し返した。


  --バシュゥゥゥッ


 2つは相殺して、周囲に黒と白の粒子を撒き散らす。


 世界が凍りつている。


 凄まじいほどの静寂。

 誰もが何も言葉を発せず、ただあの光を見つめている。


  --純白のドラゴン......



   --キュゥゥゥゥ..ゥゥン...


 再び白い光が輝いて、それを黒蝶が押し返す。


     --ズゴゴゴ..ゴゴコゴゴ,,,ゴゴゴゴゴゴゴ


 しかし次は黒蝶ごと城を貫いて、地響きが此処まで轟いてくる。


   --ブォオォォォッ


 衝撃で風が吹き抜けていく。


   --キュゥゥゥゥ..ゥゥン...


 なっ、なんでっ!?


 ドラゴンが此方を振り向いて、白い光が瞬いた。


   --カッ


 眼の前を閃光が埋め尽くして、遅れて爆音と熱波が僕達に叩きつけられる。


 それでも誰も動けなかった。


 何とか視線だけを動かして......そこには国王ごと地面をめくりあげた瓦礫の風景。  


  --いや...


 国王どころか、街の端まで真っ直ぐに何もかもを吹き飛ばして消し去っていた。


 地平線まで続く破壊の跡。


 ドラゴンが此方に向かって飛んでくる。

 避けようのない死が向かってくる...。


 それでも動けない。

 身体が全く動かない...。


 み...みんなっ...。



「(ジョニー! みんなっ! 無事なのだなっ!?)」



 ......。


 ...えっと。


 頭の中に最近知り合った少女の声が響いてきたんだけど?


 


 

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