第33話 串焼きの魅力

 



 しかしこの串焼きはやはり絶品だなっ。

 間に野菜が刺さってるヤツもうまかったが、こっちはあっさりしていていくらでも食べられるぞ。


 流石、妾なのだっ!!

 妾の目は、うまいものなら何でも見分けてしまうのだっ!!


 おかげでついつい沢山食べてしまったのだ...。


  --ケプッ


「ふぅ......」



 さて、飯も食った事だしケイトを探しに行くといるかっ。


   --んぐ


  --んぐ


     --んぐ


「......」



 むぅ、銀子(ギンコ)はまだ食うのか?

 あれだけ買い溜めてあった串焼きが、全部無くなってしったのだが...。



「銀子っ、その手に持ってるやつで串焼きは全部なのだっ」


  --ビクッ


「...これで、終わり?」


「ん、んむ」



 ぬぅ...何だか落ち込みだしてしまったぞ。


 その串焼きが全部ってだけで、まだ他にも肉料理は大量にあるのだが...。

 しかしそんな事を教えると、何故か銀子に全部食われてしまいそうな気がするのだ。


 哀愁が漂っていて可哀想なのだが、ここはそれで最後だと言う事に...。


   --くっ...


  --そんな絶望的な顔をしても駄目なのだっ



「さてと、妾は今から行かねばならん所があるのだが...」


  --んー、銀子をこんなトコに置いては行けんな...


「銀子も良かったら付いてくるか?」


「んっ、良いの?」



 妾が尋ねると、銀子が首を傾げながら聞き返してきた。



「うむ、もちろん良いぞっ

 それで出口は...あっちか?」



 周囲を見渡すと壁の所に縄梯子が設置してあるのが目についた。

 地下だって言っておったし、多分あれが出入り口だなっ。



「んっ、そこから登ると外」



 うむ、ビンゴなのだ。


 さて、それでは...っと。


   --ギシッ


  --ギッ


     --ギッ


 縄梯子を登ると上の方に木製の蓋が閉じてあった。


 この先は外だと言っておったし、無造作に開けるのは危険だな。

 別にアンデッドくらい居ても倒せば良いのだが、真上に居るヤツを倒せば汚物を撒き散らして降ってくるのだ。


  --それは生理的に嫌なのだ...


 では、蓋をちょっとだけずらして...っと。


   --ガガッ


「ふむ、もう朝になっておるのか...」



 光が差し込む隙間から顔を出すと、早速周囲を確認...ぬわあぁっ......。



   --ギャァ


  --ギャァ


      --ヴヴヴヴヴヴヴ



   --ボトッ

 --ボトッ


  --グチャッ



「......。」



 何時の間にかグリフォンまで居るのだが。

 しかもワイトやらレイスやらアンデッドの種類まで増殖しておるぞ?


 しかし、何でアンデッドじゃないグリフォンまで居るのだ?


 ......。


 むぅ、どうやらあのリッチが魔法で操っておるのか。


  --いったいどこから連れて来たのだ?


 しかし、うまく操れてないみたいで、肉付きのゾンビが捕食されてしまっているではないか。

 これは...かなりカオスな状況になっておるぞ...。ケイトが無事だと良いのだが。



  --探知(サーチ)



 ふむむ...何だか変な魔力に邪魔されて効きが悪いが、向こうのグリフォンが群れてる辺りにケイトの反応が...。

 

  --む?


 なんか、ケイトの近くにジョニー達の反応もあるな。



「良かった...」



 全員無事に生き延びていた。

 でもあの辺りは比較的強い敵が集まっているな...早く行った方が良いかもしれん。


 しかし、気をつけねばならんのが...あの鬼の気持ち悪い女の居場所なのだ。



「んー......」



 むぅ...あの女の居場所が何故か正確に掴めんのだが、どうも城の方角に居る様な気がするのだ...。妾の勘がそう言っておるぞっ。


 ケイトの居る場所からは少し離れておるし、今はまだ大丈夫だと思うが...。

 だが、城に行くとか言っておったから早く引き止めんとまずいのだ。


 アレは負けイベントだからな、戦うとまた負けてしまうのだっ...



「よしっ」


  --ガタッ


「銀子ー、行くぞっ」



 這い上がってから足元に居る銀子へ声を掛ける。



「んっ、今行くっ」



 すると直ぐに銀子が梯子を登り始めたのだが...。

 串焼きを両手に持ちながら登るなど、器用すぎるのではないか?


 んー...銀子も居るし、取り敢えずもう一度周囲の確認をしておいた方が良いかもしれんな。



「どれ...」


  --探知(サーチ)


「むっ?」



 何かが高速で近づいて...上かっ!?



「むぉぅっ」


  --バサッ



 びっくりしたのだっ。

 小柄なグリフォンが行き成り上から滑空してきたぞ。


 あの大きさからして子供なのか? 親たちの群れから逸(はぐ)れたみたいだなっ。



「銀子、危険かもしれんか..ら...」


  --あれっ?


「銀子?」


   --何処行ったのだ?


「ま、まさかっ」



 居たっ!

 さっきのグリフォンに掴まれてるのだっ!?


  --ダダッ


「まっ、待つのだっ!」



 直ぐにグリフォンを追いかけるが、ぬぅ......このままでは追いつけん、速度付与も最大までかけるのだっ。



「銀子っ、銀子ぉぉっ」



 まっ、まだ無事みたいだなっ、何だかバタバタ暴れてるが抵抗しておるのか?

 早く助けないと銀子が食べられてしまう...。いや、ちょっと待つのだっ...まさか、串焼きを取り合っとるのかっ!?


 子グリフォンの視線が銀子に全く向いておらず、振り回される串焼きを追ってウロウロしておるぞ。



「ぎっ、銀子っ その串焼きを投げるのだっ」



 あの子グリフォンは串焼きに夢中なのだっ。

 だからそれを捨てれば銀子に興味を無くして開放されるはず、それを妾がキャッチすれば救出成功なのだっ!!



「やーっ、ギンコのっ、ギンコのゴハンっ」


  --銀子ぉぉぉっ???



 命より串焼きを取っちゃだめなのだっ!

 駄目だっ、串焼きを抱え込んだら危ないのだっ、つつかれてしまうぞっ。



「また買ってあげるから、早くっ、早く串焼きを捨てるのだぁぁぁっ!!」




 

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