第7話 ステータスに意味など無いのだ

 



 それじゃあ腹も減っている事だしな、貰った夕食でも食いながら読むか。

 包を解くと中からはサンドイッチのような物が出てきた。



「ふむ...」



 見た目は普通だな。どれ...味は。



  --ハムッ...むぐ...ぐ...うぐっ


 ......。



「まずいぞっ」



 なんだこのサンドイッチは、パンはパサッパサだし挟んであるのはなんなんだ?

 肉とは認めたくないレベルの薄(うっす)い何かと、歯応(はごた)えの消え去った謎の野菜。



「これが食べ物...だと?」



 これを作ったやつは食べ物を馬鹿にでもしているのか?



「うむ、ダメだ、こんなものは食えん」



 明日中に美味いものを見つけて来んといかんな。

 少々高かろうが不味いものなんぞ食いたくないし、早速稼がねばならんな。



「さてと...」



 あまりの不味さに話がそれてしまったが、説明書を読まねばな...。



「えーっと、2枚あるのか」



  --どれどれ


 - - - - -



  『ギルドプレートの機能について』


・緊急時について


 緊急時プレートの裏に付いている魔法陣に魔力を通すと、範囲10㌔四方へ魔力波の救難信号を展開します。


 救難の魔力波を感知した場合は、プレートに方向と距離が表示されます。


 危険に瀕した仲間を見つけた場合は出来るだけ救助して下さい。

 また、救助が不可能な場合は出来る限りの情報を収集し、ギルドへの報告を御願いします。


 救難者の救助に成功した場合、組合(ギルド)と救助者から規定の報酬が支払われます。



・身分の表示について


 プレートの表に魔力を通すと、中央に持ち主のランクと名前が表示されます。

 身分証として提示が求められることが多いので、問われた場合は此方を提示して下さい。


 

・組合(ギルド)ポイントについて


 ポイントはプレートに保存されています。

 紛失すると一部ポイントが消失する可能性があるので注意してください。



・破損、または紛失時について


 破損や紛失した場合は、組合(ギルド)に申告してください。

 古いプレートは機能を失効させていただき、新しいプレートを発行させていただきます。

 ただし、発行手数料として銀貨3枚を徴収します。  



 - - - - -



「ふむ、思ったより色んな機能が付いておるな」



 それにしても救難者を救助すれば報酬が出るのか。

 見つけたら積極的に助けて稼いでいきたいところだな。


 さてと、プレートの説明書を見ていて思ったのだが...。

 『ステータス』は表示されんのか?


 てっきり、これだけ色んな機能があるから付いているかと思ったんだが。

 冒険者はどうやって自分の強さを確認してるのだ?



「ふむ...」



 そう言えば『ドラゴンテイルズ』の『メニュー』機能はやはり開けんのだろうか。



「メニューオープン」



「お、おおっ」



 呟いた瞬間、目の前に見慣れたメニューが立ち上がってきた。

 どうやらこの世界でもメニューは開けるようだな。


  --ふむ...


   --ふむふむ...


 フレンド機能はやはり使えんか...。他にもログアウトキーも当たり前だが使えん。


 まぁ、妾が使ったところで、錬(あるじ)との接続が切れるだけだったのだが。


 インベントリは...これは、使えるのか!?

 しかも『ドラゴンテイルズ』で持っていたアイテムが全て入っているではないか!!


 試しにその中から水薬(ポーション)を1つ取り出してみる。



「これは...」



 普通になにもない所から、選んだ水薬(ポーション)が飛び出してきた。



「良いのかこれは?」



 『ドラゴンテイルズ』のアイテムなんだが、この世界にこんな物を出したら問題になりそうなのだが。

 一般的な(ポーション)なら兎も角、神水薬(エリクサー)やら蘇生薬(リザレクトポーション)なんかはまずいだろ。



「......」



 取り出すのは辞めておこう。


 それよりも次の問題は、この世界の物が収納できるのかどうかだな。

 何か試しに...よし、これで良いか。


   --収納


 試しに目の前のベッドを収納してみたら......上手くいってしまった。

 目の前からベッドが消えて、インベントリの中には『宿屋のベッド(盗品)』と表示されている。



「これは、とてつもなく便利だな」



 だが人の目のあるところでこの機能を使うのは、色々と問題を引き起こしそうだ。

 これもこの世界に同等の技能(スキル)が在る事を確認するまでは、人前では封印しないと駄目だろうな。


  --まぁベッドは戻しておこう


 それで『ステータス』の方は...以前のままだな。

 ただ、この壊れ性能の裝備を着てるせいで、とてつもない数値になっておるな。



 - - - - -


 『ステータス』


【レベル】1000

【名前】レムリア

【種族】竜神族



【HP】58900 (【回復速度】 6600/s)

【MP】98500 (【回復速度】 9800/s)


【ATK】 67000

【MATK】99700

【DEF】 57950

【MDEF】98540


【STR】674

【VIT】552

【DEX】896

【INT】968

【AGI】937


 - - - - -



 ふむ、数値としてはこうやって表示されたわけだが。

 正直これがどれだけ強いのか妾にはわからん。


 これらの数値は、プレイヤーであった主...『日向(ひゅうが) 錬(れん)』が妾(アバター)の強さを知るためのものだったからな。



「んー......」



 確か、【STR】【VIT】【DEX】【INT】【AGI】の上限は確か1000だったか。

 ならばこの数値は結構高い方なのだな。


 【HP】【MP】【ATK】【MATK】【DEF】【MDEF】の部分は、防具やらを含めた謎の計算式で出されておったはずだが。

 妾にはさっぱり意味がわからん。


 元々『ドラゴンテイルズ』自体がゲーム内【ヘルプ】の【ステータス】項目で、『数値は目安だから体感で...』とか書いてあったしな。

 この、わけのわからん数字は今後も体感で良いだろう。


 さてと、次は『技術(スキル)』項目だな。



「どれどれ...」



 技術(スキル)と職業(ジョブ)は、うむ。


  --うむうむ


 --うむ...



 どれも欠けてはおらんようだな。



 - - - - -


『職業(ジョブ)』


【魔導師】Lv10


【賢者】 Lv7


【剣士】 Lv4


【盗賊】 Lv8



『技術(スキル)』


 ※魔法


【五大属性魔法】Lv10


【重力魔法】  Lv10


【空間魔法】  Lv10


【生活魔法】  Lv10


【死霊術】   Lv10


【聖魔法】   Lv10


【闇魔法】   Lv10


【神秘魔法】  Lv10


【無属性魔法】 Lv10


【時空魔法】  Lv10


 ※物理


【剣術】  Lv6


【短剣術】 Lv5


 - - - - -



 因みに『ドラゴンテイルズ』の世界で、技術(スキル)と職(ジョブ)のレベルは10が上限だ。


 そして、職業(ジョブ)のレベルが上がれば『詠唱速度』等の職業(ジョブ)技術(スキル)も一緒にあがる。

 ただしこれらは公式によって、またもや『体感で強さを実感』とか表現されている事からも察する事ができる。


 全て『隠れスキル』に設定されておって、何処にも表示はされんのだ。


 ただ、それでは流石にあんまりだと思ったのか、それとも苦情が殺到したのか...。

 公式サイトのヘルプで『職業(ジョブ)』に関する項目に、隠れ技能(スキル)が追加されておったらしい。


 妾では元々見る術(すべ)が無いし、見ることは出来んのだがな。


  --まぁ良い


 職業(ジョブ)技術(スキル)はレベルを上げれば勝手に発動するからな。

 体感も出来るし見えないところで何の問題も無いのだ。


 ただ...。


 『技術(スキル)項目』貴様は駄目だ。


 解りやすく例で例えよう。

 まず、此処に【五大属性魔法】レベル1があります。


 Q、使える魔法は何でしょう?


   A、1つも在りません


 何故なのか?

 その答えは魔法の知識が無いからだ。


 この技術(スキル)のレベルと言うものは『熟練度』やら『才能』を数値化したものなのだ。

 そこに呪文やら魔法陣やらの知識的情報は存在しない。


 だから技術(スキル)に見合った知識を図書館や遺跡系の迷宮(ダンジョン)で見つけ出し、その単語を組み合わせて呪文や魔法陣を作り出す必要があったのだ。

 そしてそれらの知識は技能(スキル)が無くても得る事が出来、これらの情報を販売する商人まで存在した。 


 そして技術(スキル)と知識の2つを手に入れた段階で、次の問題が発生するのだ。


『どの呪文が技術(スキル)レベル幾つで使えるのだろう?』


 それも謎だ。

 全くブレない、何時もの公式なのだ。


『体感で(ry』


 結果、手に入れた魔法を取り敢えず使ってみて、発動具合で検証する事となった。

 しかも『熟練』と言うのは行き成り魔法が使えるようになるモノでは無く、じわじわと成長して使えるようになって行くものなのだ。


 なので、レベル1の段階からレベル2の魔法が徐々に使えるようになっていって、レベル2に上がると安定して使えるようになる。


 それでどの呪文がレベル幾つなのかは、使ってみなければ何もわからんのだ。

 要するにここでの数値は妾にとって殆ど役にたたず、結局残念なことに公式の思惑に乗るしか無い。

  --つまり『体感』......


 数値として目に見える形で表示されているだけで、見えようが見えなかろうが試行錯誤して知識と経験を詰むしかないのだ。

 ただ、まぁ、失われたかどうか確認するのには役に立ったが...。


 さて、最後に『職業(ジョブ)』なのだが。

 これは基礎となる『下級職』が存在し、特定の組み合わせでそれらのレベルを規定値まで上げると『上位職』が発現する仕組みになっている。


 例えば『勇者』の職(ジョブ)だが、これは『剣士』のレベルを10、『魔術師』と『神官』の職を共に5まで上げる事で新しく追加される。

 単体職でも上げきれば上位職が発現し、『魔術師』のレベルを10にすれば『魔導師』が現れる。


 因みに職業は幾つでも習得できるが、メインの職(ジョブ)を1つ設定しておく必要がある。

 そしてメインを設定すれば、その『職(ジョブ)』の恩恵が受けられるシステムになっているのだ。


 他にも種族に『種族スキル』が隠れて付いていたりするのだが。

 そっちの知識は持っておらんし、今回の確認はここいらで十分だろう。


 さて、それでは寝る前に魔法が使えるかだけ確認してしまうとするか。

 此方にきてからずっと人の目があったしな。

 まだ確認ができておらんのだ。


 取り敢えず生活魔法で適当になにか...。



「ウォーター」


   --パシャッ


 うむ、呪文短縮を使って起動文だけにしてみたが、魔法はちゃんと発動するみたいだな。



「ふぁ~...ぁ」


  --うぅ......



 そろそろ本格的に眠くなってきたし、確認もこのあたりで切り上げるか。



「むぅ...このベッドもちょっと硬いな...」



 やっぱり家(マイホーム)もやっぱり必要だな。

 明日からしっかり稼いで..早く...買わねば...。




 

 

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