第1話 URLの分岐点

 俺、工藤涼はネットが超できるということ以外はただの高校生だ。

 俺は小さいころから親の影響でパソコンを触りまくっていた。

 だからパソコンでできることは一通りはできる。

 通販、ワードにエクセル。その気になればハッキングだってできるだろう。(そんなことしないけど)

 

 夏休み初日、そんな俺は宿題には目もくれず、ネットサーフィンをしていた。

 

「特別面白いネタはないな~」


 独り言を言いながらキーボードをたたく。

 すると横から声が聞こえてきた。


 「またネットサーフィンしてるのかよ。飽きないね~」

 「うっせぇよ。姉ちゃんだってよくやってんじゃん」

 「まぁね~」


 姉の工藤美香。

 見た目は美人だが、性格はかなり大雑把でマイペースだ。

 だがそれでもインターネットのことに関しては俺より強い自慢の姉だ。


 「あ、そうだ。パソコンやってるなら一つ頼まれてくれない?」

 「え?何をやれと」

 「今日配信開始のソフトがあるんだけど、それをダウンロードしておいて」

 「自分でやりゃいいじゃん」

 「そうしたいんだけど、今から部活だから」


姉ちゃんはソフトボールをやっている。だから帰ってくるのも結構遅くなる。だから俺に頼んだんだろう。

 

 「ヘイヘイ。で、何を落とせばいいんだ?」

 「サンキュー。そこにURLをメモった紙を置いておくから」

 「このダルクゲートってゲームか?」

 「そそ。もしやってみたいならやってもいいよ~」

 「やらねーよ」

 「そうですか~、布教ができなくて残念だ。まぁいいや。じゃあ、行ってきまーす」

 

 そう言って姉ちゃんは家を出た

 俺は家を出たのを確認した後、再びパソコンとにらめっこを始めた。

 


 数時間後、俺はやることを失って退屈していた。

 日は暮れ始めてもうそろそろ夕食の買い出しに行く時間だった。

 両親は二人ともIT企業で働いていて帰ってくるのが遅い。

 姉ちゃんも部活だから夕食はコンビニ弁当か姉ちゃんの分も自炊している。

 今日は姉ちゃんは夕食には帰るそうなので夕食を作る必要がある。


 「さーて、今日は何を....あ、いっけね。姉ちゃんに頼まれたソフト、まだダウンロードしてなかった」

 

 俺は姉ちゃんからの頼まれごとをすましてから買い出しに行くことにした。

 俺は姉ちゃんの書き残したURLをパソコンに打ち込んだ。

 

 妙に長いロードのあと、突然ダウンロードが始まった。


 「ゲームの説明がないなんて、変なサイトだな....。まぁいっか。買い出しに行くか~」


 俺はダウンロードが完了するのを待たずに買い出しに出た。



 


 家に帰ると、ソフトのダウンロードが終わっていた。

 当初はやるつもりはなかったが、どうせ帰ってくるまで時間がかかるだろうと思い、暇つぶし程度にとそのソフトを開いた。

 

 その瞬間、画面がブラックアウトした。


 「え」


 あまりに突然のことで動揺した

 少し経つと、画面が帰ってきた。

 しかしそこにあったのは普段使っていたデスクトップではなかった。

 そこにあったのは、この世とは思えない酷く恐ろしい光景だった。

 見たことのないソフトの山、ウイルスと思われるデータのファイル、さらには18禁では収まらないレベルの画像。

 普段見ていたデスクトップの痕跡は一つたりとも無い。

 

 「な、なんだよこれ....。ただのゲームじゃないのかよ....。いや、そのはずだ」


 俺は自分のスマホを取り出し、再びURLを打ち込んだ。

 検索結果で出たのはまぎれもない姉ちゃんがダウンロードするように頼んだソフト「ダルクゲート」のサイトだった。


 「どうしてだ....俺がさっき見たサイトと全く違う!」


 俺はそれで初めて気が付いた。


 URLを打ち間違えたことを。


 俺はソフトの終了を試みた。

 だが、どこを探しても終了ボタンが存在しなかった。


 「どうすりゃいいんだ....」


 俺は戸惑いつつもこのソフトの正体を探ることにした。

 見るに堪えない画像の数々、コンピューターウイルス、謎のデータ。

 それを見ているうちに1つの答えに行きついた。


 深層ウェブ


 本来俺たちが見ているのは表層ウェブであってインターネット上に存在する情報の10%しか見れないのだという。

 その残り90%が存在するのがこの深層ウェブ。

 表で出せないような内容がたくさんある世界。違法ドラッグに人身売買、殺し屋のことまで書かれている。

 そして深層ウェブに1度入ったら最後、表層ウェブにただでは帰れない。


 「マジかよ....。とりあえず.....、姉ちゃんに助けを乞うか.....」


 俺はそういってキッチンに向かった。

 このとき、まだ俺はこの後起きる衝撃を知る由もなかった。


 

 

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