Twitter300字ss(補習) 醸し手
収穫祭では、みな醸し手の自慢話を止めない。
うちのは器量好しで、いい色に仕上げてくれる。気立てが良くて、まろやかな味わいが自慢だ。生真面目で我慢強いから葡萄の出来が多少悪くとも、仕上がりがばらつかない。
そして数年ものの葡萄酒を持ち寄って、少しずつ味見しては醸し手を褒める。収穫にというよりは醸し手のご機嫌に感謝する日で、村中が酩酊に包まれる。
醸し手は樽に腰掛けて待っていた。彼女がやきもちを焼くから、わたしは余所のお酒が飲めない。今日も味見だけだ。
手招かれるままに歩み寄る。吐息は甘く、すぐに目が回って足がふらついた。あ、拗ねてる。
うちの葡萄酒?甘くて艶やかで、夜を凝縮したよう。
そう、この子と同じ味。
(2018.1.21発行 サークル情報ペーパー掲載 お題「酒」)
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