ゆらめく雲の中で

ふもふも

第1話

私は一人だった。


誰かに声をかけるわけでもなく、ただぼぅっと窓の外の雲を目で追う毎日だった。


最初は声をかけてくれたクラスメイトも、最近では事務連絡以外で声をかけなくなった。

そんな私を気遣ってか、木の葉は色を変えてゆく。そんなふうになったのはいつだったか、もう思い出せない。小学生時分どころか一年前の中学時代ですらも思い出せないのだから。


騒ぐ生徒もいたりでクラスは賑やかだったが、クラスの隅で雲を目で追う私の耳には届かなかった。

青が広がり、私は青に塗られてゆく。きっとその塗り残しが、私なのだと感じながら。


いつだっただろうか。


これだけは忘れないという過去がある。


思い出になり損ねた記憶の中に、将来は雲になりたいと言った私がいる。神様が空を青に塗った後の塗り残し。そんな雲に憧れた私はきっと知らないんだ。そして未だに人とのふれあいを知らない私。やり方もその意味も。


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