第90話 冒険者24

『礼には及ばない』


 デュラの美しい笑顔から向けられる視線に、レンは少し照れたように顔を背けて視線を外した。

 デュラの青白い肌は氷の世界に自然に溶け込み違和感がまるでない。幻想的な背景と相まって、御伽の国から出てきたのではと思うほど美しく見える。


 レンが照れ隠しで視線を外した先では、ベヒモスが自分の背中を振り返りアンジェの様子を窺っていた。

 ベヒモスの背中の上からくぐもった声が聞こえてくる。


「うぅ~、ざ、ざむい……。こ、ここどこよ」


 アンジェが目を覚まして体を震わせながら周囲を見渡している。

 荒野から一変して氷の世界になったのだから、大気の温度はマイナスになっていてもおかしくない。

 レンはチート鎧のため冷気を感じていないが、生身の人間には堪えるはずだ。メイは氷竜のため問題はないだろう。デュラも氷漬けにされても平然としていたため寒さに耐性があるのが見て取れる。

 ベヒモスも寒さを問題としていない。だが、アンジェは普通の人間だ。加えて言えば動きやすいように薄手の衣服を着ている。寒くないわけがない。


『アンジェ、大丈夫か?』


 眼下から聞こえる声にアンジェは不機嫌そうに顔を曇らせ、訳が分からないと声を荒げる。


「大丈夫か?じゃないわよ!ここは何処なの!」


 うわぁ不機嫌だな。レンはそんなことを内心思いつつ、状況を説明しなければとアンジェを見上げた。


『ここは先ほどと同じ遺跡のある場所だ。あそこに遺跡――の残骸――が見えるだろう?』


 レンの指差す先には大きな穴が空き遺跡の地表部は消し飛んでいる。尤も、遺跡の地表部といっても大きな石が転がっていただけで今とさして変わりない。今は石の代わりに氷の柱があるだけだ。


「……なんなのよあの穴は?それにこの氷も!」


 アンジェはまたお前か、と言いたげにレンを睨みつけていた。

 その視線に少し怯みながらもレンはアンジェに説明する。


『先ほどの冒険者たちがいただろう?彼らが私たちを殺そうとしていたのでな。スキルを使って見たのだが、これが思いのほか威力がありすぎてこうなっている』


 レンは肩を竦めながら両手を上にして、『やれやれ困ったものだ』と首を左右に振って見せた。

 その仕草が癇に障ったのか、アンジェが馬鹿を見るような目でレンを見下ろす。


「なにが、やれやれ困ったものだ、よ!困ってんのは私よ!どうやったら遺跡に穴を開けて辺り一面氷で覆うことができるのよ!非常識にも程があるわ!あと、寒いのよ!!」

『わ、分かった。直ぐに街に戻る。暫くベヒモスの背中に張り付いていろ。少しは寒さも和らぐだろう』

「言われなくてもそうするわよ!でも、その前に聞きたいことがまだあるわ!」


 アンジェはデュラを見て首を傾げた。そして、レンに視線を戻して再びまくし立てる。


「彼女はなんなの!もしかして彼女を巻き込んで怪我でもさせたんじゃないでしょうね!顔も青白いし大丈夫なの!」

『ああ、彼女はデュラ。この遺跡の住人だ。彼女の家を壊してしまったのでな。私が面倒を見ることになったのだ』

「い、遺跡の住人?この遺跡、人が住んでいたの?魔物がいるのに?」


 アンジェが訝しげな視線で、何かを探るような口調で訪ねた。明らかに疑ってかかっている。

 レンは隠しても何れバレるだろうと重い口を開いた。アンジェの反応は予想できているため気が重くなる。


『住人というか、彼女はデュラハンという魔物だ。だが、人間が大好きな心の優しい魔物でもある。言葉も話せるし意思疎通もできる。だから安心して欲しい』


 デュラも同意するように何度も頷く。

 アンジェは口を大きく開けて暫く無言で佇んだ。

 レンはその様子を固唾を飲んで見守っていると、アンジェの体が怒りで震えだす。


 うわぁ、プルプルしてる。

 あれ怒ってるよね。

 絶対怒ってるよね。

 だって顔真っ赤になってるし……


 レンの予想通り、アンジェは怒りで戦慄きながら怒声を張り上げた。


「何で、何で!Sランクの魔物と仲良くしてるのよ!どう考えてもおかしいわよ!」

『落ち着け。Sランク?なのかは分からないが、兎に角デュラは人間を襲うような魔物ではない』

「アンジェさん落ち着いてください。私は人間と争うつもりはありませんから」

「アンジェ少し落ち着くの。デュラはいい子なの」


 メイにまで言われ、アンジェは深い溜息を漏らす。アンジェは小さい頃から剣だけでなく知識も蓄えてきた。

 確かにデュラハンに敵意はないようだが、アンジェが読んだ書物では、デュラハンは人間の怨念のような存在であると記されていた。

 その強さはSランク。つまり、Sランクの冒険者でなければ太刀打ちできない。

 それと肩を並べて立っているなど、頭がどうかしているとしか思えなかった。


 だが、レンならばそれも有り得るのかと周囲の光景を見て納得してしまう。

 アンジェもレンが強いことは分かっていた。しかし、この光景は予想外、ここまで自分と実力の差があるのかと肩を落とす。


「分かったわよ。でも、デュラハンが暴れないようにちゃんと見張りなさいよ」

『随分素直だな』


 レンが思わず率直に感想を言うとアンジェは盛大に顔を顰めた。


「どうせ私が何を言っても聞かないんでしょ?もう諦めたわよ」

『まぁ、確かにそうなんだが。それとアンジェ、彼女の名はデュラだ。出来ればそう呼んでやってくれ』

「デュラと申します」


 優雅にお辞儀をするデュラに、アンジェは顔を背けてベヒモスの背中に突っ伏してしまった。

 アンジェに無視されてデュラが悲しそうに顔を伏せるが最初ばかりは仕方がない。何れ時間をかけて打ち解けていけばいいとレンは考えていた。

 寧ろアンジェの性格を考えれば大人しい方である。アンジェが以外にもあっさりと引き下がり、レンの心配の種はこれで一つ消えることになる。

 あとは襲ってきた冒険者の一件と、遺跡を破壊したことを冒険者ギルドに報告しなければならない。きっとお小言を言われるだろうとレンは溜息を漏らしたくなった。


『街に戻り冒険者ギルドに報告する必要があるな』

「レン様、お願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

『願い?私にできることであれば協力は惜しまないが……』

「それでしたら、私も冒険者としてレン様に同行してもよろしいでしょうか?」

『ちょ、ちょっと待て。それはデュラも冒険者になりたいということか?』

「特に冒険者になりたいというわけではございません。私はお傍でレン様をお守りしたいのです。このようなことで受けた御恩をお返しできるとは思っておりません。ですが、せめてこれくらいのことはさせて欲しいのです」


 デュラの眼差しは真剣そのもので、レンにお礼がしたいという気持ちが痛いほど伝わって来る。

 レン一人であれば構わないと即答したであろうが今はアンジェもいる。ベヒモスの背に視線を向ければ、アンジェがベヒモスの体毛に埋まりながらジト目でレンの様子を窺っていた。

 恐らく話を聞いていたのだろう。しかし、アンジェは何も言わずに唯々レンを見ているだけだ。

 その、視線に耐えかねたレンはアンジェを見上げて口を開く。


『アンジェ、話を聞いていたのだろう?私はデュラの願いを聞き届けたいと思っている。アンジェの意見も聞かせて欲しい』


 「はぁ~」そんな溜息がベヒモスの背中から聞こえてきた。


「チームのリーダーはレンなんだから私はレンの言葉に従うわ」


 「どうせ反論しても意味ないでしょうしね……」ベヒモスの背中からアンジェの呟きが聞こえる。

 本人は聞かれたとは思ってもいないのだろう。直ぐに顔を引っ込めてしまった。

 レンは確かにその通りだなと、苦笑いを浮かべながらデュラに視線を戻した。


『アンジェも承諾してくれた。街に戻ったら私の従者として登録しよう。そうすれば人間から恐れられることもないだろう』


 デュラの顔がぱぁっと明るくなる。アンジェに向かって大きく手を振り感謝の意を示した。


「アンジェさん、ありがとうございます」


 アンジェは面倒くさそうに片手を上げてそれに応えた。それには照れ隠しもあったのかもしれない。

 デュラの性格は今までの言動や様子からある程度は把握できた。少なくとも危険な魔物でないことはアンジェも十分理解はしている。

 しかし、アンジェの常識がそれでいいのかと自らに問いかけていた。そのため、つれない態度で無意識のうちに距離を取ろうとしていたのだ。


 アンジェの掲げた手を見てデュラは嬉しそうに目を細める。

 デュラとて魔物である自分が直ぐにアンジェと仲良くできるとは思っていない。本来であれば避けられるべき存在である。にも関わらず、アンジェが自分を受け入れようとしているのが感じられ、小躍りしたくなるほど嬉しかった。


『さて、話もまとまったようだし、一度コルタカの冒険者ギルドに戻るか』


 レンがメイに視線を向けると、メイは大きく頷いた。


「はいなの」


 次の瞬間、銀世界から見慣れた街の光景に変わっていた。

 流石に何度も転移しているので慣れてきたのか、ベヒモスを見て逃げる住民はまばらになってきている。尤も、相変わらず遠巻きに眺めるだけでベヒモスに近づく住民はいない。危険はないと知っていてもやはり怖いのだろう。

 レンはデュラを引き連れ冒険者ギルドへと入り、メイはいつものようにベヒモスと共にレンの帰りを待つ。アンジェはまだ寒いのか、ベヒモスの体毛に埋もれて動こうとしない。


 まだ陽が高いことからギルド内に冒険者は少なく視界がよく通る。派手な鎧のレンは否応なく目立つため自然と視線を集めていた。

 レンがカウンターの前で足を止めると、受付嬢が横目でちらりとデュラを確認した。一瞬、この人は誰だろうと怪訝な表情を浮かべるも、直ぐに笑顔を貼り付ける。


「いらっしゃいませ。どのようなご要件でしょうか?」


 受付嬢は笑顔で訪ねながら、心の内では絶対に碌でもないことだと溜息を漏らしていた。

 なんでいつも自分の所に来るのだろう。これは新手の嫌がらせではないのかと疑ってしまうほどだ。

 涼しい顔で聞き耳を立てている同僚を恨めしそうに横目で見やり、直ぐに視線をレンへと戻した。


『彼女を私の従者として登録したい』

「従者?冒険者として登録されるのではないのですか?」


 受付嬢は怪訝な表情でレンを見つめる。ほら、変なことを言い出したと言わんばかりだ。

 従者として登録できるのは魔物や魔獣であって、人間は冒険者として登録するのが当たり前だ。

 というよりも、人間は従者として登録できない。これは犯罪を犯して冒険者の資格を失った者が、従者として冒険者に戻ることを防ぐためにある。

 従者登録は魔物や魔獣のためにあり、人間はその適用範囲外に当たるのだ。


『彼女は人間のように見えるがデュラハンという魔物だ』

「はぁ?……し、失礼しました。その、デュラハン?本当に?」


 受付嬢は舐めるようにデュラのことを上から下まで見渡す。

 どこからどう見ても人間にしか見えない。それも自分よりも遥かに美しい絶世の美女だ。

 何かの間違いではと再度問いただす。


「あの、何かの間違いではないでしょうか?人間にしか見えませんが?」


 デュラハンは滅多に出現することはないため、受付嬢もデュラハンは知識で知っているだけで見たことはない。

 しかし、受付嬢が知るデュラハンとは余りに違いすぎる。デュラハンとは人間に増悪を抱く危険な魔物。しかし、目の前の女性は穏やかな笑みを浮かべ増悪など一切感じられない。それどころか近親感さえ覚えてしまう。


『間違いのはずはないのだがな……』


 レンはデュラに視線を移し、念のためステータスを確認してみた。


 種族 デュラハンロード

 筋力 143710

 体力 157890

 魔力 127312

 抗魔 137940

 敏捷 117996

 耐性 156371


 えっ!?

 強くない?

 種族もデュランじゃなく、デュラハンロードなんですけど……

 これ、冒険者が束になっても勝てなくない?


 レンは受付嬢に視線を戻し、申し訳なさそうに口を開く。


『ああ、すまない。私が間違えていた』

「ですよね。こんな綺麗な女性がデュラハンだなんて」

『その通りだな。彼女はデュラハンロードだった。私の間違いを許して欲しい』


 受付嬢は助けを求めるように隣に座る同僚の女性に視線を向けた。

 だが、隣の受付嬢は自然な仕草で顔を背け、さも忙しそうに手元の書類に視線を落としている。

 その書類どっから出したんだよ!受付嬢は内心突っ込みを入れながらレンに営業スマイルを見せた。


「あの……、私の記憶が正しければ、デュラハンロードは災害指定の魔物何ですが……」

『ん?そうなのか?だが、ベヒモスも登録できたのだから別に問題はないだろう?』


 んな訳あるか!問題多ありよ!声を大にして言えたらどれだけ気持ちがいいことか。受付嬢は高ぶる気持ちを抑えぐっと耐え忍ぶ。


「え?いや、そういうわけには……。抑、本当に彼女はデュラハンロードなのですか?」

「はい、デュラハンであることは間違いございません。デュラハンロード?それは初耳ですが……」


 レンが答えるより早くデュラが返答した。

 女性の言葉に受付嬢は更に嘘なのではと眉間に皺を寄せた。

 美しい声は人間の女性そのもの、これが魔物の発する声なのかと疑念しか湧いてこない。


「では、デュラハンロードであると何か証拠を見せてください」


 受付嬢の言葉にデュラは困ったように考え込む。

 証拠と言われてもレンには思いつくものがない。いっそ首のチョーカーを外して首を取ってみせるか、そんなことを考えているとデュラがそれではと口を開いた。


「では、武器と鎧を出しましょう」


 その言葉と同時にデュラの体が黒い霧で覆われていく。

 受付嬢や周囲の冒険者が警戒する中、霧の中から漆黒の鎧を身に纏い、自分の身長は有ろうかという大剣を携えたデュラが姿を現した。


 周囲の受付嬢や冒険者が凍りつく中、デュラが「これでどうでしょうか?」と声をかける。

 受付嬢は目を丸くして首を縦に振るばかりだ。

 一方でレンもデュラの変化に驚いていた。デュラの鎧姿は一度見ているため、その外見に驚いたわけではない。

 レンは見間違いではと再度デュラのステータスに視線を落とした。


 種族 デュラハンロード

 筋力 287420

 体力 315780

 魔力 254624

 抗魔 275880

 敏捷 235992

 耐性 312742


 嘘だろ?

 何これ?

 全ステータスが倍に跳ね上がってる?

 戦闘体制に入るとベヒモスよりも強くなるのか?


 よく考えれば、レンの〈竜降下・氷柱ドラゴンダイブ・アイシクル〉で無傷なのだから弱いはずがない。

 遺跡にいた他の魔物が絶命した中で、一人涼しげな顔で生き残ったのだ。強いに決まっている。


『これで彼女がデュラハンロードだと分かってもらえたかな?』


 受付嬢は隣の同僚と顔を見合わせて、何とも形容しがたい表情を浮かべた。それは諦めの表情に近いのかもしれない。


「分かりましたよ。登録すればいいんですよね。ではこの用紙に必要事項をご記入ください」


 受付嬢はもはや半分やけであった。こいつは、どうしていつも自分の所に来るんだと腹ただしくなる。

 隣に座る同僚が「えっ!勝手にいいの?」と小声で話しかけてくるが、そんなことは知ったことではない。だったらお前が責任をもって対応しろよと言いたくなる。

 目の前いる金ピカ野郎はどうせ断っても無茶振りを通すのだ。遅いか早いかの違いでしかない。

 受付嬢は唯々一刻も早くレンに消えて欲しかった。


『これでいいか?』


 差し出された用紙を確認し受付嬢は頷く。

 ベヒモスを登録した時の認識票を受け取り、魔道具でデュラハンロードと刻み込んだ。


「これで登録は完了です。お疲れ様でした」


 受付嬢は認識票を手渡し、満面の作り笑いでさっさと消えろと言外に含める。

 だが、そうは問屋が卸さない。


『まぁ待て、ギルドに報告もある』


 まだあんのかよ!受付嬢はギリギリと歯を食いしばりながら、それでも笑顔を忘れない。


「ほ、他にもまだ何か?」

『うむ、東にある遺跡で冒険者に襲われたのだが上手く加減ができなくてな。全員氷漬けになっている』

「冒険者に襲われた?」

『ああ、ベヒモスを殺して名を上げようとしたらしい。全部で20人くらいいたな』


 ベヒモスを討伐するとかどこの命知らずだよ!受付嬢のみならず、聞き耳を立てていた冒険者たちも、揃ったように心の中で呟いていた。


「えっと、その冒険者たちの認識票は何色でしたか?」

『全員確認したわけではない。だが、不意打ちをするために私に近づいた者は緑色の認識票を下げていたな』

「へ、へぇ~。み、緑ですか……」

『では、報告は以上だ。邪魔したな』

「ま、またのお越しをお待ちしております」


 レンは踵を返し出口へと歩き出す。遺跡を破壊した件や冒険者のことで問い詰められるのを避けるため、受付嬢の言葉に振り向きもせず逃げるように立ち去った。デュラはと言えば、受付嬢に深々と一礼してからレンの後を追っている。

 受付嬢は内心、二度と来るなと毒を吐きながら二人の背中を見送っていた。


 二人がギルドを出ると、担当していた受付嬢の周りに人が集まる。

 冒険者が群がり、さっきの女性は本当にデュラハンロードなのかと聞いてくる。正直、やかましいことこの上ない。

 デュラハンなのは間違いないだろうが、デュラハンロードであるかなど一介の受付嬢に分かるはずがなかった。

 だが、知識にあるデュラハンとは大きく違うため、恐らくデュラハンロードであるとは言える。

 そんなことは後で誰か調べるだろう。それよりも問題なのは遺跡で氷漬けになっているという冒険者たちだ。

 遺跡は国やギルドで管理しているものではないため壊れても問題はない。しかし、冒険者は別だ。

 レンの言葉が正しければ相手は貴重なSランクの冒険者である。


「ねぇ、さっきの言葉が聞き間違いじゃなければ、氷漬けになってる冒険者ってSランクよね?」


 隣の同僚に話したはずだが目の前の冒険者たちがうるさい。

 冒険者たちも聞き耳を立てていたため、その話は聞いていたが、真実なのかと受付嬢に確認を取ろうとする。

 自分の目で確認したわけではないので、それが真実なのかは受付嬢にも分からない。

 冒険者を無視して隣の同僚に視線を向けると、処置なしとばかりに肩を竦すくめていた。

 受付嬢は立ち上がり重い足取りで階段を目指す。

 なんて報告したらいいんだろう……。ギルドマスターへの報告に思いを巡らせ、重い足取りは更に重くなるのであった。


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