【家族】約束のゆくえ

「約束したでしょ? すきな人が出来たら、ちゃんとお姉ちゃんに教えてねって」

「……ごめん」

 力なく声を震わせて答えるこちらを前に、かぶせるように告げられる言葉はこうだ。

「いいの、そんなの。悪いのは祈吏のほうでしょ?」

 せいいっぱいの強気な笑顔を貼り付けるようにしながら、祈吏は答える。

「カイはもう年頃の男の子だもん。いつまでも祈吏のかわいい弟じゃないものね」

「祈吏、」

 ふるふる、と首を振り、決意を込めるような心地で僕は答える。

「……僕のお姉ちゃんはいままでだってこれからだって、祈吏しかいないよ」

「カイ、」


 いつしか潰えてしまった約束を結び直すように、世界一大切な女の子の掌を僕はそうっと握り返す。



第44回 #Twitter300字ss お題「約束」

「ジェミニとほうき星」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880500070)海吏と祈吏

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