ー番外ー
インク沼
近頃『万年筆
さて、万年筆とインクは切っても切り離せない相棒である。そんなもの、黒いインクを詰めて使っていればいいだろうという声が聞こえてくるようであるが、これを読み終える頃に読者諸氏のインクへの見方が少しでも変わっていれば作者はしたり顔のことだろう。
読者諸氏の「好きなもの」は何であろうか。色々あるだろう、食べ物でも飲み物でも文具でも良い。思い浮かべて頂けただろうか、必要ならいくらでも待つので思い浮かべてみてほしい。ディテイルに色や形、どこに行けば手に入るだろうか。すると各々「拘り」が見えてくるはずだ。言い換えるならば「どこの」という
万年筆のインクも同様だ。一言に黒や紫といってもたくさんの種類がある。紫を例に紹介しよう。セーラー社ジェントルインクの
常用する色の系統が決まると、細かい色の違いが楽しくなってしまう。黒だって彩度が違うから各社を比較すると面白い。こういった好みの追及を万年筆の世界では「インク沼」などと形容したりする。好みの色合いにインクをブレンドしてくれるサービスまで存在するから、この沼は底なしである。凝ったインク瓶などは香水の瓶がごとく意匠を施してあり、まさに万年筆が
しかし、どんなことも楽しさは重要である。楽しくないことはやりがいを欠くから、そのほうがよっぽど不健全だろう。私自身、インク沼にどっぷりはまり、紫という紫のインクを
一つ、国内で人気の高いインクとちょっと感動した経験を記してこの番外の結びとしたい。パイロット社
そんな所感をすっかり忘れた頃、なんとなく寝付けなかった夜のことだ。図らずも満月の深夜、散歩に出た私は一歩でその場に立ち尽くすことになる。かつて手元で美しいと思った
いかがであっただろうか。インクが持つ美しさの一端でも感じてもらえれば幸いである。本編もあと少しで完結する。皆さんには今しばらくお付き合い頂きたい。
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