第16話 詮索
「じゃあ、君がウチの主祭神の運庫草薙命(ウンコクサナギノミコト)に呪われて困っているという話は本当なのだね?」
皮肉にも我が家の茶色いソファからこちらに身を乗り出し、まるで気張ったかに見える姿勢の神主が訊いてきた。自室で神主と
神主は先程までとは打って変わって驚くほどに冷静でいる。まだ、僕の身に起きた一連の出来事のほんの一部しか話していないというのに何故だろうか。もしかして神主にもウンコの神と意思疎通ができるという僕の話を信用するにあたり、思い当たる節が過去にあったのだろうか。こちらからはウンコの神から呪いの伝達があった事、その呪いの内容と解決方法を簡潔に述べただけだ。
「正確にはウンコの神様に直接呪われたわけではないんですけどね……」
先ほどの問いに対し僕は歯切れが悪く返答した。脳裏にあの忌々しい低俗な害獣の顔がよぎる。そして僕は眉間に
「直接ではないって……どういう意味だい?」
首を
容姿が似通っていることと、歳も恐らくそう離れていないように見えることから最悪、兄弟か親戚という可能性が考えられる。コンビニのときのパターンを考えると嫌な予感がするし、仮にそうでなかったとしても同じ美容クリニックを利用する間柄で知人ということもあり得るかもしれない。要は
「ある人を介して間接的にといいますか……それに関しては後で詳細を言いますよ。というわけで僕は今、その呪いのせいで学校にも行けてないんですよ。一応来年受験を控えた中学生なんですけどね」
「中学生? 老けているから結構な子供部屋おじさんかと思ったよ。へえ、何処中だね?」
何とか話を逸らせたようだ。老けているというのは聞き捨てならないが、このまま当たり障りない会話を続けていってさりげなく恐田の名前を出し反応を窺うことにしよう。
「温和中学校です」
「温中か。ここからだと割と遠いね」
「そうなんですよ。だから登校も遅刻ギリギリのことが結構あって、ハハハ」
「そんなんだと先生にもよく叱られるだろう?」
「そうなんですよ! 担任の先生でオソレダブリド……間違った! 恐田先生、恐田怖一って先生がいるんですよ、そうそう! 名前通りの厳しい先生でそりゃあもう……」
僕は神主の顔を凝視した。一瞬、彼の表情が曇った。が、それも束の間。今度は笑みがこぼれ、晴れだした。と思った瞬間にまた曇り出した。それと同時にコンマ1秒とも思える僅かな時間、彼の口元が緩んだかに見えた。晴れ間が見えたのだ。そしてまたどっちともつかない曇った表情を浮かべた。
「曇り時々晴れか!」
僕は思うより先に叫んだ。
「ビックリした……! 何だい急に!?」
神主が唐突に西川きよしのモノマネをし出したのかと錯覚するほど目玉をひん剥いて訊いてくる。
「す……すみません! こっちの話です。気にしないでください」
「無理だよ! 急に天気予報されても、何だそっちの話かぁ。とは収められないよ! 説明してくれ!」
そう言われ、僕は返答に
「いや……昨日の……昨日の天気予報なんだったかなってずっと考えてて……ふと急に思い出したんですよ」
「そうはならんだろう! 昨日の天気予報はそんなに気にならないと思うがね! 普通、明日の方が気になるよ! それに昨日の天気予報は1日雨だったぞ!?」
会心の返しだと思ったがその考えは神主のマシンガン口撃により、見事に覆された。 とっさに僕はあぁ……とか、うぅ……とかえぇ……など言いながら時間を稼ぎ、天啓が降りてくるのを待った。そしてそれが来るのに
「おぉ……そうだ! アレです! 僕、実は毎日日記を付けてるんですよ! それでその日の天気予報も必ず書くようにしてたんですけど、昨日のだけ偶々書き忘れちゃって……これでどうだ!?」
僕は起死回生のカードを神主に叩き付けてやった。ような気分に浸った。
「これでどうだと言われても……もういいよ。そういうことにしておこう」
神主は渋々納得してくれたようだ。良かった。僕はほっと胸を撫で下ろした。
だが、結局のところ神主とオソレダブリドリの関係性については分からずじまいだった。そこで僕はわざとらしくも再度強調してみた。
「で、どこまで話しましたっけ? あぁそうだ! 恐田先生! 恐田怖一先生のとこまででしたね! 50代半ばぐらいの凄い厳しい先生の」
僕は再び神主の顔色を窺った……が、分からなかった。何ともいえない色々な解釈のできる表情だったのだ。
「兄さん……!」っていうような表情にも見えるし、はたまた赤の他人の話をされ退屈そうにしている表情にも見える。
そのときだった。僕が思案していると神主が一言ポツリと呟いた。
「兄弟・・・!」
盃交わしてる人の言い方だと!?
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