第196話 剣士祭Ⅳ②

「寝過ぎた」


 試合時間に間に合うギリギリにロックが起きてきた。熟睡していたようだ。ルークたちもあえて起こさなかった。


「快眠だったか?」


 アクシズが揶揄う。


「ああ、万全だ。行こう」


 ローカス道場の全員7名で試合会場であるクレイオン道場に向かった。


「ああ、やっときた。もう試合が始まりますよ。棄権かと思いました」


 係の人に急かされて一行は会場入りした。早めに入って緊張する時間を長く過ごすよりはずっといい、とルークは思った。ただ少しギリギリ過ぎたか。失格になっては元も子もない。


「では剣士祭本選準決勝第一試合、クレイオン道場対カンタロア道場の試合を開始します」


 昨年五位のカンタロア道場は少し籤運に恵まれてここまで来ていた。その実力はクレイオン道場には及ばないことは明らかだった。


 カンタロア道場としてはなんとか一勝、という事だったようだがクレイオン道場はそれほど甘くない。三戦全勝で決勝へと駒を進めた。マシュの出番はまたなかった。


 そして第二試合が始まる。


 クリフ=アキューズは予定通り中堅で出てきた。そしてローカス道場はロック=レパードが初めて中堅に座る。ロックの我が儘を誰一人咎めない。


「では第二試合ローカス道場対メスト道場を始める」


 審判が宣言する。


「先鋒戦ローカス道場マコト=シンドウ対ルトア道場マーラ=トーレス、始め」


 マコトとマーラの力量の差は明らかだった。但しマコトもただでは負けたりしない。自分よりも格上の相手との試合は道場で何度も何度も繰り返して来たのだ。


 二人は闊達に打ち合う。そして少しづつマーラが上を行く。マコトはそれを辛うじて受けている。なかなか反撃には出られない。


「なんで、こんなに強い奴ばかりいるんだよ」


 マゼランで一番を目指す、と公言しているマコトには上が多すぎると感じていた。ただ、出来ないとも思っていない。


「マコト、粘れよ」


 アクシズが声を掛ける。マコトにとっては格好の修行だと思っていた。実戦に勝る修行は無いのだ。


「判ってるって」


 マコトも十分理解している。本気で自分を倒そうとして来る相手との試合は本当にいい練習になる。命のやり取りをしている訳ではないが、どちらも本気なのだ。


 マコトは出来る限り、今の自分の力の限り粘って決着が付いた。


「そこまで、マーラ=トーレスの勝ち」


 これでルトア道場の一勝となった。

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