第178話 剣士祭Ⅱ④
次の日。ダモン道場で行われていた二次予選の決勝の時が来た。
道場を称しているダモン道場は昨日グロシア州所属アンテノン道場を3対0で破って順当に勝ち残っている。
ダモン道場は一次予選は免除、二次予選も1回戦は免除されているので二回戦しか戦っていない。その分試合慣れしていない、とも言えるかも知れない。特に副将、大将はロックと同じでまだ一試合もしていないのだ。
ローカス道場は一次予選から4試合戦っているので、その分疲れているとも言えるがあまり関係が無かった。
「ではダモン会場での二次予選決勝戦を始める。この試合で勝ち残った道場は本選に進める八道場になる」
審判が高々と宣言する。
「先鋒戦ダモン道場キース=ワリット対ローカス道場マコト=シンドウ、始め」
試合が始まるとキースは少し間合いを取った。マコトの試合を見ていたのか、ちゃんと対策をしてきたようだ。マコトの弱点である身体の小ささを最大限に利用しようと言うのだ。
今までマコトは対格差のある相手に対して、速さや技で翻弄してきたがキースはそれを許さない。キースは横幅はマコトと変らないが背丈は20cmは高い。技量そのものもマコトよりも上だった。
「ちょっと、流石に去年の4位は違うな」
マコトの言葉には最早余裕がない。打ち込み続けているが簡単に受けられている。マコトは体力には自信があったが、いつまでも隙が見つけられないでいた。
「昨日の試合相手と違い過ぎないか?」
確かにゲイル道場も有名道場でありマゼランの三騎竜の一角クリフ=アキューズが稽古を付けていただけあって基礎などはしっかりしていたし十分強かった。
ところがダモン道場の先鋒は桁が違うようだ。昨年は同じ聖都騎士団所属の準優勝メスト道場に2対3で敗れ3位決定戦でランドルフ道場に同じように2対3で破れて4位になっている。
キースは昨年も先鋒を務め、個人としては本選で2勝を挙げている。強さは本物だ。
マコトはいつまで経っても活路を見いだせないでいた。剣速はクスイーと比べると遅い。しかしキースの方が試合巧者なのは間違いなかった。
「マコトはちょっと拙いね」
「うむ、まだ相手にするには少し早かったようだな」
アクシズも認める。マコトの技量はアクシズが一番理解している。今のマコトではキースには太刀打ちできない。マコトも自分で理解している。まだまだ修行が足りないのだ。
「マコト、いいぞ」
アクシズが声を掛ける。もう負けてもいい、という意味だ。ただ、それをそのまま聞くマコトでもない。負けるにしても足掻けるだけ足掻きたいのだ。
「もう少し粘る。見ててくれ」
それからマコトはキースが受けられないくらいの剣撃を放つ。あと少し、というところまでは迫ったが、最後にはキースに受けきられてしまい、初めて反撃を喰らった。勝負がそこで付いた。
「そこまで、キース=ワリットの勝ち」
マコトが初めての敗北を喫した。このレベルになると全勝とは行かない。ルークは全勝優勝を謳っていたが、それはあくまで鼓舞するためで本当に全勝できるとは思ってはいない。本当に全勝してしまったらロックの出番が無くなってしまう。
「悪い、勝てなかった。修行が足りないことを実感した。後を頼む」
マコトが殊勝なことを言う。初めて負けて落ち込んでいるのだ。
「いい、相手が強かっただけだ。修行が足りないことも確かだが、負けることも経験だよ」
アクシズは容赦がない。ただマコトの成長も感じていた。そしていい経験になったとも思った。
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