第168話 剣士祭④

「なんか逆に怖いよ」


 翌日、ローカス道場のル=ラオ道場との一次予選が行われた。結果はローカス道場の三連勝で1勝した。手応えとしては全くない。ル=ラオ道場は終わって敗退が決まった。


「何がだ?」


「なぜル=ラオ道場が剣士祭に出てきたか、だよ」



「そりゃ出たいからに決まっているだろう」


「みんなロックの様に剣のことだけ考えている訳じゃないんだよ」


「そうなのか?」


「そうなの」


 ロックからすると道場で5人いるなら剣士祭に出るのは当たり前、という考えになるのだが、実は剣士祭に出ていない道場も少なからずある。


 5人の出場者を揃えられなかった道場もそうだが、元々プレトリア州騎士団所属の道場はあまり出場したりしないのだ。


「それと試合中に少し変なところがあったんだよ」


「変なところ?」


「クスイーやマコト、アクシズの試合の間中向こうの剣士の一人がこちらの何かを探っている様子だったんだ」


「何かを探っている?」


「魔道の一種だと思うんだけど相手の色んな情報を探っていたんじゃないかな」


「何を探っていたんだ?」


「それは判らない。でも彼がプレトリア州所属という事を考えると魔道力やどんな魔道を使えるのかを探っていたんじゃないかと思う。でも三人はほぼ魔道を使えない筈だから無駄だったかもね」


「ルーク、お前は大丈夫だったのか?」


「僕は勿論大丈夫。そしてロック、君もね」


 ルークは相手に情報を与えるようなことはしない。ルークよりも高位の魔道士になら情報を盗まれてしまうかも知れないが、今回のような相手なら問題は無い。そしてロックは簡単な魔道も使えない。というかロックは魔道を覚える気が無い。


 いずれにしても、これで一次予選はローカス道場と新生ヴォルデス道場が1勝で並んでいる。明日の直接対決で勝った方が2次予選に出場できる。


 ダモン道場での一次予選は順調に進んでいて既に二次予選に進出を決めている道場もあった。


 ダモン道場は一次予選は免除で二次予選からだが、二次予選も二回戦からの出場になる。二次予選には他に6道場が出場できるのだがガーデニア州騎士団所属のゲイル道場とバウンズ=レア自治領騎士団所属のドーバ―道場は二連勝で二次予選を確定させていた。


 一次予選は三人で終わってしまったのでルークとロックの出番がなかった。ロックからすると試合はしたいのだが弱い相手とはやりたくない。一次予選には強い相手とは当たりそうになかったので気持ちは二次予選に向いてしまっている。


「とりあえず明日も三人で終わって次に進もう」


「一度も試合に出ないでいいのか?」


 アクシズはロックに確認する。出たいんじゃないかと思ったからだ。


「弱い相手では満足できないからな。ゲイル道場は一度行ったことが有るけど、あの時は三騎竜がいたから道場に強い奴がいたかは覚えてないけど」


 ロックの意識はクリフ=アキューズだけに向けられていたので他の者は全く目に入っていなかったのだ。

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