第145話 ヴォルデス道場
「一応名乗ってもらおうか」
「それはいいが、あんたはここの師範か道場主あたりかい?」
「そうだ。儂はこのヴォルデス道場の師範ソル=ヴォルデスだ。名乗っても仕方ないが、礼儀として名乗っやったぞ。次はお前たちだ」
「俺はロック=レパード、こいつはルーク=ロジック、それに元々道場破りに来ていたのはマコト=シンドウ、それにさっきあいたのところの塾生を一掃していたのはアクシズ=バレンタイン、最後にローカス道場のクスイー=ローカス。まあ今は全員ローカス道場の一員だけどな」
マコト=シンドウとクスイー=ローカスの名前を言った時のソルの表情をルークは注意深く観察していた。そして二人の名前の時、ソルの表情は少し変化があった。それがそのまま証拠にはならないが聞き覚えのある名、ということは確かだと確信した。
「なるほど、少し聞き覚えのある名もあるようだ。まあいい、では相手をしてもらうとしようか」
聞き覚えがある、ということは認めたがそれが誰のことなのかは応えていない。
「それはいいけど強い奴じゃないとおれは納得しないぜ」
「そう慌てるな。こいつはさっきの師範代とは違うぞ」
師範と一緒に居て一人だけロックに切り掛からなかった男が前に出てきた。
「サルス=アーデと言う。覚える必要はない」
そう言うとサルスはいきなりロックに切り掛かって来た。速い。ロックも少し前、クスイーの剣を受ける前なら避け切れなかったかも知れないほどの速さだ。師範が自信を持って出してきたことも十分頷ける腕だ。
「凄い、強い。これは少しは楽しめるかも知れない」
ロックは本当に嬉しそうだ。ただマコトの関心はサルスの強さそのものではない。強い奴が犯人の可能性がある、という一点だけだった。
「ソルさん、ロックが勝ったら聞きたいことが有ります。腕づくでも応えてもらうのでよろしく」
ルークは優しい笑顔でそう伝える。
「勝てたら、な」
ソルはまだ自信を持っている。それほどサルスを信用しているのだろうか。ルークが見るにロックとの差は歴然だったが。
「ロック、毒かもしれない!」
ルークが叫んだ。相手は剣に毒を塗っているかも知れない。掠っただけでも十分効果がある種類のものであれば、掠らせるわけには行かない。
ソルの顔色が変わった。判り易い。
「判った、任せろ」
ロックはそう言うと、それまでただ受けるだけに専念していたのを止めてロックから打ち込んだ。クスイーには及ばないがロックの剣速も超一流だ。
ロックがサルスの剣を跳ね上げる。その剣がソルの目の前に突き刺さった。なんとか避けたソルが尻餅をつく。その慌てぶりからすると、やはり毒が塗ってあったのだろう。
「勝ったぞ。それで何を聞くんだ?」
「ルークはその人を押さえておいて」
ルークはロックにサルスを拘束させた。
「それで、聞きたいことなんですが、マコト、あれを」
マコトは手拭いを取り出した。
「この手拭いに見覚えは?」
ソルは見ようともしない。
「ちゃんと見てもらいましょう。マコトの父親を殺した奴が持っていた手拭いです。もし知っていて隠すのなら、あなたも同罪ですよ」
ソルは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
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