第2話 流星

 シャロン公国の北方と中央の境に座し、世界の屋根とも呼ばれているロゼ山脈の中でも一際高く聳えるアローラ山のほぼ中腹にその村はあった。村の名はノクス。この村に行こうとする者は、まずカウル山脈のウラノまで登り、更にトーアまで出て、北へ北へと山麓を進まなければならない。道はあることはあるが、不慣れな者が決して登れる道ではなかった。


 先代の村長が昨年老齢で逝き、その後を継いでまだ三十歳になったばかりのロームが新しいい村長となった。


 ロームが若くして村長となったことには、相応の訳があった。彼は今彼の前で夜空を見上げ、満天の星を見つめている老人に好かれているのだった。そしてこの村での村長たる条件とはただそれだけだったのだ。


 老人はただ星を見つめている。それがロームには世界の総ての様相を見通しているかの様に見えるのは決して過大評価だとは思わなかった。


 そのロームから見ても老人は決して年齢を判別させない何かを秘めているようだった。彼は天界の塔とも呼ばれるアローラ山の中腹のノクスに数百年前から住んでいると伝えられている魔道師でオーガと呼ばれていたが本当の名前かどうか誰も知らなかった。


「ロームよ見るがいい、星が流れて行くわ。」


「吉兆でございましょうか、老師。」


「このわしにも解けない星があるものよ。」


 オーガはそう云いながらも必死でその流れ星の相を読み取ろうとしていた。


 その時流れていた星は一瞬輝きを増したかと思うと、幾つかに分かれまるでシャロン全土を覆うようにして飛び去った。


「7つ、そうか7つに分かれたのか。」


 そのままオーガは考え込んでしまった。こうなると1週間でも身動き一つしないことをもう数回目の当たりにしているロームは仕方なしに自分の家へと帰るのだった。

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