ポンコツロボット

@arist2014

第1話 ポンコツロボット

ロボットがゴミ捨て場に捨てられている。故障して持ち主に役立たずとして捨てられたポンコツロボットだ。でも実は人工知能はちゃんと働いているのだ。実際、ロボットのくせにとても感受性が豊かだ。それゆえ、持ち主に捨てられたことをとても悲しんでいる。

「僕はもう人の役に立てないのかな。何のために生きているのだろう。」

今日は雨が降っている。涙を流す機能がないのに、雨の日は、顔がぬれると本当に泣いているような気がして特に悲しくなるのだ。

そこに一匹の薄汚れた猫が通りかかった。

「もしもしロボットさん。あなたはロボットのくせになぜ涙を流しているの?」

「これは顔が雨に濡れているだけさ」

「そうなのね。でもあなたはとても悲しそうよ」

「そりゃあそうさ。僕は天涯孤独のロボット。誰にも必要とされていないのさ」

ロボットは悲しげに答えた。

「かわいそうなロボットさん。よかったら私の家にいらっしゃいな。何もないけど、家族がたくさんいて賑やかで楽しいわよ」

「それならちょっとだけお邪魔しようかな」

ロボットは故障して不自由な体を何とか起こして、猫の招くほうについて行った。

「さあ、ついたわよ。我が家へようこそ」

猫の家についてみてびっくり。4匹の子猫が泣いたりわめいたり飛び回ったりして、まるで戦争のようだ。

「おかえり、お母さん。今日のご飯はなあに?」

一匹の子猫がたずねた。

「それがね、何も見つけられなかったの。だって、あなたたちを長い時間ほってはおけないでしょう?」母猫は困ったように答えた。

「そんなー。おなかが減っておかしくなっちゃいそうだよ!」

4匹の子猫は一斉に大声で泣き出すのであった。

「それなら僕が子猫たちの面倒を見ているから、あなたは食べ物を探してきたらいいよ」

ロボットがおずおずと答えた。

「まあ、助かるわ。でも、この子たちはまだ小さくてとても手がかかるのよ」

「大丈夫さ、これでも僕は前のご主人の家では小さい子供の遊び相手をしていたんだよ」

ロボットは胸を張って答えた。

「それじゃあ、お願いするわね」

母猫は少し心配そうにしながら、再び家から出て行った。

「わーい、ロボットさんが僕たちと遊んでくれるんだね!」

というやいなや、4匹の子猫は一斉にロボットに飛びかかった。

ガッシャーン!

ロボットは4匹の子猫のアタックでひっくり返ってしまった。

「こらこら、子猫たち。そんな乱暴な遊びじゃあ、僕はあっという間に壊れてしまうよ」

ロボットは何とか体を起こして答えた。

「じゃあ、何をして遊ぶんだい?」

一匹の子猫が口をとがらせて答えた。

「そうだね、じゃあ歌を歌ってあげよう」

「えー、お歌なんて退屈だよ」

4匹の子猫は不満たらたらである。

「まあ、そういわずに聞いてごらんよ」

そう言うとロボットは、自分のこと、自分の元の持ち主のこと、母猫や子猫たちのことを、即興で面白おかしくリズムカルに歌い上げた。

その様に4匹の子猫は大喜び。

「すごい、すごい!ほかにできることはあるの?」

「お安い御用さ」

いうやいなや、ロボットは子猫たちの遊び道具の5個のお手玉を拾い上げて、空中で投げたりとったりを交互に繰り返した。

またまた4匹の子猫たちは大興奮。

それから4時間後、母猫が無事食べ物を見つけて帰ってきた。

「遅くなってごめんなさい。子猫たちの相手は大変だったでしょう?」

戸を開けながらしゃべった母猫はびっくり。なんとあの腕白な子供たちは遊び疲れてすやすや寝ているではないか。

「まあロボットさん、あなたはどんな魔法を使ったの?」

「いっただろう。子供の遊び相手はお手の物なのさ」

ロボットは誇らしげに答えた。

「まあ、なんてお礼を言ったらいいのか。よかったら今日はご飯を一緒に食べていって」

「ハハハ、僕はロボットだからご飯なんて食べないよ。こう見えても太陽エネルギーだけでずっと動ける優れモノなんだぜ」

ロボットは機械の顔をカタカタと揺らして笑った。

「まあ、あなたみたいな役に立つロボットを捨てるなんて、前の持ち主はどうかしているわね」

「最新のロボットを買ったから僕は用済みになったのさ」

ロボットはさびしそうに答えた。

「さあ、長い間お邪魔したね。そろそろ帰らなきゃ。」

ロボットは少し名残惜しそうに言って戸のほうに歩きだした。

「ロボットさん!」

母猫が帰ろうとするロボットを呼び止めた。

「よかったら私たちの家族になってくれないかしら?」

「何を言っているんだい。そんな迷惑はかけられないよ。」

ロボットは母猫の急な提案にどぎまぎして左右の目を赤白に点滅させた。

「迷惑なんてとんでもない。あなたって子供たちの遊び相手も上手でご飯もいらないなんてすばらしいわ。ご飯を探しに行く間子供たちを見てくれる人がいなくて本当に困っていたの。あなたがよければずっとここにいてちょうだいな。」

母猫に背中を向けたまま、ロボットは、機械の体をカタカタと震わせた。

「もう僕は天涯孤独のポンコツロボットじゃない。」

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