25:女の子の中ってこうなっているんだ



 一時間ほどで戻ってきた女神様は、いつも白ワンピの上からピンク色のエプロンをつけて、簡易キッチンで調理を始めた。


「エアカッター」


 魔法で生み出した風の刃で玉ねぎやニンジンを切り裂き、


「フレア」


 魔法で生み出した火の玉で鍋を熱くさせる。

 これって料理なのか?


「っていうか、女神様いつの間に魔法を覚えたんです? いいなぁ」


 俺も魔法を使いたい。


「私は女神なので、才能があったんです。生前のスペックのまま転生したトモマサさんには、魔法は無理ですよ」


 くそぅ。


 どうやら女神様はカレーを作っているらしい。

 しばらく後ろ姿を眺めていると、空腹を誘う香りが漂ってきた。

 調理方法はともかく、エプロン姿の女の子を後ろから眺めるなんて、なんだか新婚みたいだなぁ。

 後ろからそっと抱きしめて、


『ちょっとトモマサさん!? 料理中に、危ないですよ!』


 とか慌てる女神様の手をそっと掴み、


「俺の心も君に料理されちゃったみたいだ。お返しに、今度は俺が君の身体を料理したいな」


 なんてね。唇を奪うの。

 そういうシチュもいいよね。



「トモマサさん?」

「えっ? な、なにかな」

「全部声に出てましたよ」


 女神様がジト目になっている。


「うわあああああああ!」


 俺は頭を抱え、床の上にごろごろ転がった。

 ふと、目に瓶が止まった。女神様の買い物用トートバッグに入っていたのだ。



「なんだこれ?」


 手にとって見ると、乾燥わかめみたいな物が入っている。ラベルには、「触手わかめ」とあった。

 ひっ、触手!

 昼間のプレイを思い出し、瓶を落とす。便がコロコロと女神様の足元にまで転がっていった。


「おまっ、こんなの買ってくるなんて嫌がらせか! 俺が触手に犯されているところを見ていたんじゃなかったんですか!」

「見てましたよ。大丈夫ですよ。これは料理用です」


 女神様は瓶を拾うと、中の乾燥したわかめをひとつまみ。鍋にぶち込んだ。


「カレーにわかめって」

「意外と合うんですよ」


 ボコボコ、鍋が泡を吹いた。


「すっごい泡吹いてるけど、入れ過ぎなんじゃないか?」

「ええー? ひとつまみですよ?」


 女神様が鍋の方を向く。次の瞬間だった。

 鍋から何本ものの巨大化したわかめが伸びてきて、女神様の身体を縛り上げ、宙に浮かした。



「ひゃあああーーーー!」



 驚いた女神様が瓶を落とした。


「やっぱり大丈夫じゃないじゃないか!」


 もう一度瓶を手にとって見ると、ラベルに注意書きがあった。


「お湯一滴をたらすだけで十分増えます。決して、大量のお湯につけないこと――だとさ。女神様、異世界の素材を注意書きも読まずに使っちゃダメじゃないですか」


 女神様は両腕もろとも腰を縛られ、身動きが取れずにいた。

 天井すれすれのところまで持ち上げられているから、白ワンピの中が見える。今日のパンツは白だ。


「大量のお湯につけてしまった時の対処法は書いてないんですか!」

「えーと……」


 もう一度注意書きに視線をやる。


「ひゃっ」


 女神様に視線を戻す。

 おおう!

 新たなわかめが女神様の太ももに巻き付いていた。先端がつつーっと脚をなぞり、スカートの中へ侵入。パンツの上を撫でている!



「な、なんてえっちなわかめなんだ! リアルの触手は怖くてキモいと言ったばかりだけど、こういうシチュならありかもしれない!」



 わかめは、カレーの入っている鍋から出たばかりだ。ちょっと湿っている。撫でられた下着が少し透けて――。


「何観察してるんですかーっ! 早くなんとかしてください!」


 女神様が股を閉じて叫んだ。

 やれやれ、仕方ない。


「えーと……大量の水分を吸ったわかめは、えっちな触手へと変貌することがあります。15歳未満の方の使用は避けてください……? なんてけしからんわかめだ。女神様、これ大人のお店で買ったんですか?」

「普通の露店で買いました! 私が瓶を手に取ったら、太ったおばさんがニヤニヤしながら、安くしておくよって言うから……」

「それ絶対勘違いされましたよね」

「それで! どうすればいいんですか!」


 続きを読む。


「触手となったわかめは、一時間でその活動を止めます」

「一時間もこうしてろって言うんですひゃあああんっ」


 別のわかめがもう一方の太ももに巻き付き、女神様を無理やり開脚させた。

 うはっ、下着が横にずれかけている。み、見えそう!



「トモマサさん!」

「わ、わかりましたよ。んーと……どうしても活動を早急に止めたい時は、水をかけてください。冷水を浴びると、わかめは力を失います……だってさ」


 ちょうどよかったじゃないか。

 鍋のすぐ側には水道がある。あれをひねってやれば、出てきた水が鍋に落ちて終了だ。


「ちょっと勿体無い気もするけど、助けてやるか」


 瓶を床に置き、流しに近づく。

 しかし、足元に別のわかめが忍び寄っていた。俺は一瞬で足首を絡め取られ、逆さまの形で宙吊りになった。



「うわーっ」


 そこにまた新たに産まれたわかめが襲いかかり、俺と女神様をまとめて縛る。

 俺の股間に女神様の顔が、女神様のスカートの中に俺の顔が、押し当てられた。



「な、なにしてるんですかーっ!」

「ひぅっ。そんなところで喋られると感じちゃうっ!」


 口の動きがズボン越しに伝わってきて、ぴくりとイケナイ棒が反応してしまう。


「と、トモマサさん! 動かさないでください!」

「そんなこと言われても!」



 また女神様の口の動きに、反応しちゃう。

 というか、女神様が喋らなくても、俺の鼻と口は女神様のおパンツ。に押し付けられているんだよね。ちょっと湿ったおパンツ。中が見えそうで見えない、ギリギリのラインが眼前にある。



「あ、これ噛んで引っ張れば脱がせるんじゃ」

「やったら本気で怒りますよ!」

「じょ、冗談ですよ」


 でも身体は正直で、女神様の唇に押し付けていたりして。もちろんズボン越しだ。

 これはなんとかしないとまずい。理性がもたない。

 俺はわかめの束縛から逃れようと、腕を動かした。



「ちょっと、どこ触っているんですか!」

「どこも触ってないよ! わかめから腕を引き抜こうとしてるだけです!」

「肘が胸に当たってます!」

「ええ? 平べったくてわかんなかったなぁ」

「あとで殺します」

「じょ、冗談ですって! ちゃんと柔らかいですよ!」

「ちゃっかり堪能してるんじゃないですか!」



 どう答えても怒られる。

 やっとのことで腕を脱出させ、蛇口を掴んだ。素早くひねって、冷水を出す。水がじょばば~っと鍋に落ちていき、みるみるうちにわかめがしぼんでいった。

 俺と女神様は緩んだわかめから落下し、床に叩きつけられた。俺が下でクッションになり、その上に女神様が落ちてくるという形だ。



「いたた……ひどい目に合いました」



 起き上がる女神様と、まだ仰向けになったままの俺。

 最後の最後に、わかめは不味いことをしてくれやがった。

 しぼんでいく際に、パンツにかかっていたやつが僅かに引かれたのだと思う。パンツが太ももの辺りまでずり落ちていた。

 俺と女神様は互いの股間に顔を押し付けるようにして、ぶら下がっていた。それがそのまま落下したのだ。


 つまり、俺の頭上には女神様のスカートがあって、その中が見えていて、大事なところを隠しているはずのパンツが降りていて。





「うわっ、女の子の中ってこうなっているんだ」




 股を開いた形で立っていたもんだからね。

 見えちゃった♡



「きゃああああああああーーーーー!」



 顔面を踏まれましたってね。


 結局、晩飯は外の屋台で済ませることになり、おかずは全部女神様に取られたのだった。




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