16:脇しゃぶっちゃいますよ?


 夕方、部屋に戻ると女神様が床の上で仰向けになっていた。白いタンクトップランジェリーとパンツだけの姿で、おへそ丸出しにして寝息を立てている。

 だらしないなぁ。

 いくら美少女でも、むしろ美少女だからこそ、こういうのはやめてほしい。



「起きて女神様。寝るならベッド上がって。というか、夕方から寝てないで!」


 肩を揺すると、うっすらと目を開ける。



「あ、おはよぅお兄ちゃん」



 お、おう。

 寝ぼけてるなこいつ。いつから寝てたんだ。

 女神様は俺の腕を引っ張ると、そのまま抱きついてきた。


「えっ、女神様?」


 俺の顔が、女神様の小さいけど確かに柔らかいおっぱいに押し付けられる。



「まずいですって女神様! ああっ、服の生地が薄いせいで乳首の感触がっ!」



 このままだと理性を失ってしまいそうなので、もがいてみた。

 顔の位置が少しずれて、目の前には女神様の脇がきた。

 ムダ毛なんて一本もない、生まれたてみたいにキレイな脇。だけど寝汗で湿っていて、ちょっとだけ汗臭くもあって。だけどそれが石鹸のような爽やかな香りで混ざり合い、独特のえっちさを演出している。


「ちょっ、女神様? そ、そんなことすると……脇しゃぶっちゃいますよ?」

「んんっ……」


 女神様が俺を開放した。

 女半身を起こし、ぼさぼさの頭をかく。

 くそっ、目を覚ましたのか。やっぱりしゃぶっちゃえばよかった。



「帰ってたんですね。おかえりなさい……」


 女神様は半開きの目を擦りながら、ベッドの下から小瓶を取り出し、コルクを指で弾いて開けた。中に入っているのは、おそらく水。ごくごくと喉を鳴らしながら飲む。


 さっきはだらしなさに引いたけど、ロリっぽい顔立ちをした美少女が美味しそうに水を飲む姿って、なんかえっちだなぁ。

 こんな娘に”してもらえば”、少しはマシになれるだろうか。




「女神様、俺に痴漢してください!」




 意を決し、俺は土下座した。



「ぶばぁっ!」


 女神様が水を吹いた。

 俺は顔面に唾液混じりのお水をぶっかけられた。

 ご褒美ですね。さっそくプレイですねわかります。


「な、ななな、ナニ言ってんですかバカなんですか!」


 違った。

 顔を沸騰しているみたいに赤くさせて、驚いている?

 あれ、今日の女神様は盗撮ビデオ見てなかったのかな。



「確かに私は可愛いです。心も身体も永遠の17歳。最も美しかった時を保っています」

「最も美しかった時? そういえば女神様って、何歳なんですか? 女神様って、生まれた時から女神様なんですか?」

「女神というのは、生前徳を積んだ者だけ死後につくことの出来るお仕事です」


 じゃあ、女神様にも普通の人間だった頃があるのか。

 徳を積んだって、結構長いこと生きてきたのかな。


「生前は何歳だったんですか?」

「女の子に歳を聞くのはマナー違反です。これだから童貞は」


 こりゃ、17歳より上なのは確実だな。

 今の身体が17歳なら、元が何歳でもいいけどね。



「それより! いくら私が可愛いからって、痴漢したいだなんて! ついに頭まで薄い本になったんですか!」

「薄い本なのは女神様の頭の方じゃ――いやそうじゃなくて、痴漢してください。されるの俺です」

「ど、どっちみち……セクハラ、です」


 うわっ、さらに赤くなってモジモジしはじめた。

 なんか俺、イケナイことしてるみたい。



「セクハラをいうなら、普段女神様がしている盗撮と、それを本人の前で見るのもセクハラなんじゃないか?」

「うぐっ……」


 女神様が反論しようとしたのか、口をパクパクさせた。

 何も思いつかなかったらしい。



「トモマサさんが仕事出来なすぎて追い出されるのは私も困ります。わ、わかりました。協力しましょう」


 と、建前を並べつつも了承してくれた。



「じゃ、じゃあ、俺が立っているんで、適当にお願いします」



 今度はちゃんとカーテンを閉めて、窓側に立つ。

 女神様が寄ってきて、じっと俺の顔を見上げた。


 目をそらしたくなるのは、コミュ障のさが。

 そこをグッとこらえ、女神様の長い睫毛と綺麗なコバルトブルーの双眸を注視。

 やっぱりちょっと照れくさいので、唇のあたりを見つめよう。

 よく見れば、唇、ぷるんとしてて潤っているなあ。寝起きなのに。


「そ、そんなに赤くならないでください。こっちまで恥ずかしくなります」


 ぷいっ、と女神様に顔をそらされた。



「長生きしてる割には、女神様ってウブですよね。やっぱり処女なんですか?」

「ち、違います! わ、私は……け、経験豊富です!」

「じゃあどんな経験したんです? はじめて挿れた時、血が出るって本当ですか? どうでした? 痛かったです? 生理が重いと機嫌が悪くなるのって、実際あるんですか?」

「そ、それは……その……って、生理の話は関係ないじゃないですかーっ!」



 ビンタされた。

 女神様、処女っぽいなあ。



「う、後ろ向いてください。触られる練習なら、それでもいいはずです」

「そ、そうですね……」


 くるりと背を向ける。


 どのタイミングでどこを触られるのかわからない分、こっちの方がドキドキする。

 けど、顔を見ないで済むし見られることもないので、幾分か気持ちは楽だ。



「じゃあ、いきますよ?」

「優しくしてください」

「それ、普通は女の子の言うセリフです」

「この世界じゃ男が言うセリフですよ」

「そうえば、そうでしたね」


 ぴと。

 背中に温かい感触が宿った。

 おそらく、手のひらで触られている。撫でられている。背骨のあたりをつつーっと。



「猫背です」

「そ、そういうのはいいので、もっとガバーッと、お願いします」

「結局触られたいだけなんじゃないですか?」


 そうかもしれない。

 否定は出来ないところが悔しい。だって男の子だもん。可愛い女の子に触られたくなるのは仕方ないよね?


 黙っていると、女神様が手を前に回してきた。



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