閑話 ミルファーの町案内
アンドリューの依頼のあと、すぐになにかの依頼が来るということはなかったので研吾はミルファーに以前頼んでいた町案内をお願いすることになった。
町は人口1万人ほどで、それほど大きな国ではないらしい。
それでも町の中心部には市が開かれ、それなりに人通りが多い。
もし迷子になっては元の部屋まで戻れる気がしない。仕方ないのでミルファー提案する。
「ちょっと人通りが多いから手繋いでいいかな? 迷ったら大変だし……」
するとミルファーはそっと手を差し伸べてくれる。
「それじゃあ簡単に案内していきますね」
それからよく行きそうな場所に案内してもらった。
まずは市を見て回り、そのあとちょっとした小物が売っている雑貨屋さんへとやってきた。
研吾は特に見るものがなかったのだが、ミルファーが少し見たそうにそわそわとしていたので、仲に入ってみると店員の人に声をかけられる。
「いらっしゃいませ。おや、随分アツアツなんですね。ごゆっくりー」
どういうことだと思って店員さんが向けていた視線の先を見てみるとまだ握られたままの手があった。
「まだ握ったままだったね。ごめん……」
「あっ……」
研吾が手を離すとミルファーは小さく声を漏らした。
それからは手と手が触れそうになるとミルファーは顔を赤くしてサッと引いてしまうようになった。
さすがに人に言われて照れてしまったのだろう。
そして、どことなく距離が開きながらも町案内だけはしっかりとしてくれた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。あれはなんだ?」
一緒に町中を見て回っていたときにふと目についた建物? らしきものを見た研吾は思わずミルファーを呼び止めた。
「あれってどれですか?」
「ほらっ、そこにある建物。どう考えてもおかしいでしょ!」
研吾が指さしていたのはいつ倒れてもおかしくないような細い柱がまっすぐ伸びているかと思ったら十メートルくらい上空になぜか建物がその柱の上に立っている。
なぜこれで倒れずに建っているんだ?
首を傾げ、柱を叩いてみる研吾。
しかし、倒れるような様子はない。
「別になにもおかしくないですよ。これ、魔力鉄製ですよ。すごーく高いんですけど、その代わり滅多なことで倒れることのない金属なんですよ」
聞いたことない素材だ。魔力と付いていることからこの世界特有の素材なんだろうな。ただ、まるで空中に浮いているようなその建物は前の世界で見ることのできない建物で目から離れなかった。
これを使ったら色々と変わった建物も作れるかもしれない。
ただ、値段が高いのか……。
使ってみたい気持ちはあるもののやはり値段か……。こういったものは気楽に使えないよな。
少しガッカリしながらも視界から消えるまでその建物を凝視していた。
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