この紋所が目に入らぬか!

「静まれ、静まれ!」

 縮緬ちりめん問屋の隠居老人の従者が、ふところから何かを取り出した。

「この紋所が目に入らぬか!」

 葵の御紋がデカデカと染め抜かれた風呂敷を、法廷前での「勝訴」の垂れ幕の如く広げる。

 離れた位置にいる悪代官の視力が低くても見えないとは言えず、悪人は平伏した。

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