週間少年カクヨムから重大なおしらせ

ちびまるフォイ

あなたが採用したい作家はだれ?

「さて、どの作者にしようかな……」


カクヨムに「雑誌機能」が追加されてから作品を読む目が変わった。


この作者は自分の雑誌に入れるべきか。

と、まるで面接でもするように読むようになった。


「うん。この作者は王道じゃなくていい。声をかけてみよう」


いくつか気に入った作者については個別に近況ノートでコメントする。

作者が何人か集まったところで、ついに俺の雑誌が始まった。



『週間少年 カクヨム』



カクヨム自主企画の成功から新たに追加された新機能。

雑誌参加した作者が自分たちの作品をひとまとめにして連載していく。


まるで週間連載の雑誌みたいだ。


「さてさて、人気はどうかな……?」



雑誌連載されている作品には個別評価がつくのはもちろん、

雑誌単体でも評価がつけられるので楽しみだ。


評価は……。


「すごい!! 星がこんなにもある!!!」


自分でも驚くほどの人気だった。

他の連載雑誌『異世界小説 ゲーマーズ・オンライン』よりも人気だ。


「テンプレ小説は1つも入れなかったのが逆に良かったんだな。

 やっぱり、みんなテンプレには目が飽きていたんだ。

 うんうん。俺の目利きはやっぱり正しい」


俺の連載する『極道キャスター』は予想通りの人気で、

『週間少年カクヨム』はカクヨムで一番の人気雑誌になった。


テンプレ厨どもざまあみろ。





などと、調子こいていたのは雑誌の休載が相次ぐ前までだった。


「はぁ!? 書けないってどういうことだよ!?」


「なんか……次の展開が思いつかないんだよ……。

 参考にしてたゲームのシナリオはこんなんじゃなかったし」


「バカ野郎! ほかのゲームのシナリオをなぞった小説なんて書いてどうする!

 自分自身で思うまま書けばネタギレなんてないだろう!!」


「とにかく、思いつかないものは思いつかないんだよ!

 みんながみんなお前みたいに速筆じゃないんだ!」


中堅作家の離脱がどんどん増えていった。


アンチテンプレ小説の作者たちはオリジナルの世界観を産み出すことはできても、

その先に連載していけるだけの体力がなかった。


「ごめんね……1話完結の話だと、毎週ネタを探さなくちゃ……」


「なぁ、もう少し頑張ってみないか?」


「みんなあなたのようにスラスラかけるわけじゃないのよ……。

 1回もネタにつまらなんかったあなたがうらやましいわ……」


止まらない作家の離脱により、抜けた穴を埋めるために作家を入れた。

『週間少年カクヨム』と銘打っているのに、中身の作品数が1つじゃ話にならない。



しかし、評価はさんざんだった。



>昔のころのほうがおもしろかった

>ほかの雑誌と同じになってしまった

>テンプレ小説の寄せ集めなら読む意味ない



「く、くそ! どんどん評価が落ちていく!!」



後付けて連載にくわえた作家たちはみんなテンプレ作家だった。

安易な作品展開に読者はどんどん離れていく。


カクヨム雑誌は定期的に評価がリセットされる。


「どうしよう……一定評価に満たないカクヨム雑誌は消されてしまう……。

 どうやって人気を取り戻せればいいんだ……」



人気の異世界小説の作家を呼び込むか。

また昔のように、一味かわった作家を探すか。

他雑誌で人気の小説をヘッドハンティングするか。



必死に考えても「今からじゃ遅すぎる」という終着点が待っていた。


「もうだめだ……」


諦めかけたそのとき、1人の作家がやってきた。



>『週間少年カクヨム』に連載していいですか?



なんかもう誰でもいいや。

どうせこの雑誌は終わりなんだから。


そんなやさぐれ気分で連載にくわえたことを大いに後悔した


『カクヨム運営のここがクソ無能!!!!』

『ダメ小説、惨殺講座』

『恋愛小説書くやつはポエムと小説の区別がつかない』


新規作家の小説はどれもこれもが挑発的なないようだった。


「や、やめてくれ!! もうお願いだから連載しないでくれ!!」


実は人気作家で『週間少年カクヨム』を復活させてくれるとか

甘い考えを持っていた自分が許せなかった。そんなうまい話はない。


聞いたことがある。末期の雑誌にやってきてはとどめを刺しに来る作家がいることを。


「今度こそ完全に終わりだ! 作者に見限られるより先に運営に消される!!」


こんな無残なエンディングになるなんて。

最後にふと評価数を見ると、目をうたがった。


「え? すごい星の数だ! こんなことがあるのか!」



>このぎりぎり感がほかにない

>いいぞもっとやれ

>このアウトロー感こそ少年カクヨムだ!



めちゃくちゃで、ムチャクチャな作品だったがそれが話題性につながり

『週間少年カクヨム』は人気を取り戻した。


まさに逆転ホームラン。



「ありがとう!! 君のおかげで雑誌はまた人気を取り戻せたよ!!」


「感謝なんてしなくていい。復讐しにきただけだ」


「ああ、わかる、わかるよ。このテンプレに満ちたカクヨムへの復讐だろう?

 うんうん。君の作風はそんな反抗心から生み出されているからね」


「……」


「でも、君は実はいい人なんだろう。落ちぶれた雑誌を見捨てなかった。

 こうして注目を集めて、雑誌を助けようとしてくれたんだ!」


「それは違うな」


「え? どこがちがうんだ? 実際にそうじゃないか」


「注目を集めたのはあっている。でもそれは雑誌を救うためじゃない」


作家は投稿していた自分の小説を見せた。




「この雑誌の注目度が集まれば、あんたが俺の作品パクってることもバレるだろう?」








『週間少年カクヨム 廃刊のお知らせ』


作者の一身上の都合で雑誌の連載を急きょ終了いたします。

先生のオリジナルな次回作にご期待ください。

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