第05話 外堀、埋めちゃいます

陽の君が来たの。我が家に。

両親に任せて、当然私は、愛しい自室に立てこもってます。面倒だもん。


「末の神様について、ご夫婦のお話を伺いたくて」

「恋バナは大歓迎よ」

「女同士の話もあるだろ? 席を外すよ」

「あら、武神様もいて下さらなきゃ」

「そうか?」

「それで、あなた何を知りたいの?」

「知ってること洗いざらいとか言えねえし」

「本音、ダダ漏れよ」

「?」

「弟の、末の神のことねえ」

「それと、女神様と武神様が神族でいらっしゃるなら、

 お嬢様も神族ですよね? でも、7柱の神に含まれて無いのも不思議で」

「それはだな。うーむ。『引きこもりの神』だとでも思ってくれ」

「たまに村でお見かけしますけど、あんな美しい方が?」

「ま、うちの子のことは横に置いて、あなたの恋の話をしましょ。

 弟のどこが好きなの? 出会いは?」


「引きこもりの神」ですって。ふーん。お仕事サボって、実行してあげようかしら。


そうこうするうちに、叔父様が帰ってきました。

「あれ? 姉様達に用事ですか」

「私の魅力を理解しない誰かさんの、外堀を埋めるの。ふふふふふ」

「君は、そのビョーキ治した方がいいね」

「?」

「私は、姪の部屋に退散しようかな。ごゆっくり」


あらあら、叔父様が私の部屋に避難してきたわ。

「君の部屋は、本当に座る場所無いね」

「そんなとこ立ってないで、隣いらっしゃいよ」



さ、両親と陽の君の話に戻しますね。

「うーん。他人同士が知り合うには時間が必要でしょ」

「ええ」

「私なら、捕まえて軟禁する」

「おいおい。僕は結果的に君を愛してるけど、その出会いは狂ってる」

「だって、それしか方法知らないもん」

「ええと、武神様は軟禁されたことが?」

「当時は、ただのフルカン冒険者だったからな。女神には勝てないよ」

「末の神様を封じつつ、2人きりになるアイテムとかありませんか?」

「不可能じゃないけど、私にも立場があるから」

「なあ、陽の君」

「はい」

「君は、とても魅力的なエルフだよ」(妻の方から激しい殺気が)

「まあ」

「アイテムとか、神の力で軟禁するなんて方法を取らずに、その魅力で十分戦える」

「このおっさん、妻子持ちなのに、若い女口説くの?」

「そのビョーキ、分かりやすくていいな!」

「?」



叔父様は、居心地悪そうに、私のベッドの端にちょこんと腰かけているの。

「なあ、僕らの姫君」

「はあい」

「頼むから、この部屋掃除させてくれ」

「ヤですう。私は、ここが落ち着くの」

「私は時々、君が分からなくなるよ」

「でも可愛いんでしょ?」

「悲しいことにね」

「えへへー。

 じゃ、お仕事よ、叔父様。近くにいるのに悪いけど、

 お母様お父様以外を、天界へ招集かけます」



天界で、今日は5つの球体にぼうっと光が灯ります。

私が彼らを照らすのも、いつも通り。


「2件、問題があるの。まず1つ目から説明します。

 叡智の女神の教団で育てられている子のことなの。

 ちょっと、彼の未来を見てくれない?」


5柱の神族達は、溜息を洩らしました。

彼らが何を見たかというと――


叡智の女神の教団で、朝の日課を終えた8つの男の子が祈っているの。

『叡智の女神様、おはようございます。

 今日もこうして、僕を養って下さってありがとうございます。

 僕は勉強が好きです。女神様は全てをご存知ですよね。

 僕はこの前、試験で1番を取れました。嬉しかったです。

 あっ。朝ごはんの時間です。

 今日も皆が幸せでいられるように、お導き下さい』


優しい、良い子でしょ? で、彼が22歳になるとね――

『叡智の女神様、今日も1日守って下さったことお礼申し上げます。

 あなたの息子は、学院で学ぶ程、悲しみを覚えるようになりました。

 私の信仰が弱く、女神様のご降臨を賜ることは叶いません。

 お会い出来てお話し出来たら、どれほど救われることでしょう。

 女神様の前では貴族も村人も、富豪も貧しい者も、

 同じ「我が子」と扱って頂けます。でも、世俗では異なります。

 誰もが幸せでいられるようにすることは、可能なのでしょうか。

 知恵の貧しい私に、どうか加護をお与え下さい』


真面目な子に育ちました。優しいし物事が見えるから苦しむのよね。

私は、悲しい話は嫌い。だから、お見せしたくないけれど――


28歳になった彼は、国家反逆罪で処刑される前に、こう祈りました。

『叡智の女神様。私はどこで道を間違えたのでしょう。

 友も支持者も全て失いました。

 王族や貴族、教団長等、権威を持つ者達を廃すること。

 貧富の差がありすぎる点は、貧しい者に教育を与え、

 富豪達には痛みを支払わせること。

 私の願いは過激すぎたようです。

 今、女神様の元へ向かいます。

 愚かな私でも、息子と呼んで下さいますか?』


「さあ、皆の感想聞こうかな」


主神   「悲しいですが、秩序は重要です」

豊穣神  「学院で考えすぎたわね」

美の神  「生き急いだ。私は彼に『美』を愛でて欲しい」

叡智の女神「彼を導けない己を恥じます」

末の神  「未来は未来です。8歳の男の子に寄り添いましょう」


「主神は頭固ーい。彼はやり方を間違えていますが、

 彼が殉じた正義にも一理あるでしょ。

 叡智の女神は、恥じてる暇があるなら、彼を愛しなさい」


「この件は、叡智の女神に預けます。異論の有るものは?

 はい、居ないわね。肩の力抜いて取り組みなさい」

「承りました」



その頃、両親達は、陽の君に話せる範囲で叔父様のことを聴かせていました。

「創世神話の時代から、数百年前まで眠られていたのですね」

「うん。びっくりしたわよ、いきなり『姉様』って美少年が来たの」

「末の神様の美少年姿を見たなんて、もう刺すしか!」

「本音漏れてるよー」

「?」

「あなたねえ、聴くか嫉妬するかどっちかになさいな」

「女神様は、武神様のことで、どちらかにできますか」

「無理ね」

「気が合いますね」

「なあ、オレ、もう席外していいかな。君ら止める自信ない」

「奥様と、か弱い私を見捨てると仰るの? 誉れ高き武神様が」

「嫌味か」

「私が褒めても通じないなんて、女神様に飼いならされてるのね」

「またビョーキ出てるぞ。

 オレは鍛えた。鍛えて得た力は、神としての仕事で使う。

 だが、妻と娘の為にこそ使う。オレは、妻が好きなんだよ」

「むー」

「あのな。男は3種類いる。

 妻1人とどれだけ深く分かり合えるかを重視する者。

 何人抱いても満たされない者。

 潜在的には後者だが、前者だと誤解している者。

 オレは、妻とどこまで理解し合えるかを生きる」

「それは奥様の教育?」

「どうかな。生きてみて、こうなった。飼いならされたかどうか知らんが、

 オレは妻しか見えないんだよ」

「末の神様に、そんな風に思って頂きたい……」

「あー。ちょっとあなた。陽の君ちゃん、泣いてるじゃない」

「オレ、無駄なこと言ったか?」

「陽の君ちゃん。あのね、夫は怒ったわけじゃないの。泣かないで」

「……ゔらやましぐで(羨ましくて)」

「味方になってあげるから、泣き止みなさい」

「……」(陽の君は頷くものの、嗚咽が止まらない)

「あなた、席外して。この子、泣きたいだけ泣かせます」

「ああ、それがいいだろう」



あらあら。お父様も傷口に塩塗るようなことするわね。

で、天界では、もう1つの問題を扱うところなの。


「豊穣神の信者が多い国に、絶望して生きるのを諦めそうな男がいるの。

 彼の来歴を見てくれる?」


5柱の神族達は、ただ、黙っています。

彼らが何を見たかというと――


男が5つの時のことです。

『豊穣神様。今日も僕の村は平和です。

 うちに子ヤギが授かりました。赤ちゃんヤギは初めて見ました。

 すごく可愛いです。あの子が、元気に育つように守って下さい。

 父様母様達のお仕事を、今日も僕が手伝えますように』


ね? 静かな村の、平凡で優しい男の子なの。


男が25歳の時のことです。

『豊穣神様。父母に反対され、勘当同然で家を出た私も、

 10年かけて、やっと自分の店を持つことが出来ました。

 私に仕事を叩き込んでくれた義父も、妻も元気です。

 子どもも与えられ、里の両親達も喜んでいます。

 女神様に与えて頂いた機会を、活かして見せます』


心身共に充実しているわね。彼のお店は繁盛します。その後、彼が40歳の時に義父が隠居し、義父の店も任されるようになりました。


そして、58歳の今――

『豊穣神様。あなたに祈れぬ息子をお許し下さい。

 里の両親達や親族は、流行病はやりやまいで失いました。

 妻と子どもたちは、祭りの帰りに事故に巻き込まれ、もういません。

 店の仕事を任せた者に、財産のほぼ全てを奪われました。

 私は、もう若くありません。ここから立て直すことは不可能です。

 あなたに頂いた機会を、私は活かせなかったのでしょうか?』


これも、私達にとっては祈りなのですけれど、彼の中では異なるのでしょうね。

きっと、弱り果てた彼の悲鳴なのでしょう。


「ねえ、豊穣神」

「はい」

「この件は、主神と美の神に任せます」

「私は不適格ですか?」

「あなたは彼が失った物を取り戻せるような選択をするでしょ?」

「ええ」

「だからダメ。主神と美の神のやり方が気に入らなくても、黙って見ていなさい」

「畏まりました」


「主神・美の神、聞いての通りです。彼が生きることを諦めずに済む、

 第二の人生を与えなさい。2人で相談するんですよ」

「「承りました」」


「では、それぞれの場所にお戻りなさい。

 叡智の女神は少年の件、主神と美の神は男の件、報告待っています」



「お仕事モードつかれるう」

私はベッドに大の字で寝っ転がりました。あっ、叔父様に足をぶつけちゃった。

「神族達に、この部屋を見せたら驚くだろうね」

「だから見えなくしてるんじゃない。ここに彼らは降臨できないし、

 そもそも私が許可しないと入れないし。

 我が家は、どこにでもある民家ですけど、私がいれば、最強の城塞よ?」

「王族の暮らしを求めず、村の衆と同じ暮らしを選んだことは評価する。

 君の私生活を見えないようにすることも賛成だ。しかし、汚部屋はなあ」

「1000年かけても説得できないわよ。それに欠点ある方が可愛いでしょ」

「欠点の自覚はあるんだね」

「あら、急に聞こえなくなったわ。

 報告待ちでしょ? 『雲の巣・改』で遊んで待ちます。寝オチするかも。

 何かあったら、起こして下さいな」

「今回は、僕の役目って、君のお守りかい?」

「嬉しいでしょ? 可愛い姪と一緒にいられて」



さて、お母様の薄い胸に抱かれて、泣きたいだけ泣いた陽の君は、

やっと落ち着いたわね。

「そんなに泣くほどだったの?」

「私は恋は興味無いんです」

「うん?」

「女神様ご夫妻みたいな関係に進みたいの」

「恋する時間さえ飛ばしたいなら、振り向かせるのはなお辛いでしょ」

「はい。末の神様が、今はお仕事に夢中だと伺っていますけれども、

 眼中に無いのは、とても苦しいですわ」

「私は人を好きになる力加減が分からなくて練習したけど、

 あなたの場合は、モテるけど、人を好きになったことは無かったのかな?」

「興味ない人に求愛されるの、鬱陶しいですよね!!」

「うん。末の神の気持ち分かった?」

「分かりたくないです! 振り向かせてみせます!!」

「自分は棚に上げるのね。あなたは、神族に求愛してる自覚はあるの?」

「恐れ多いことなのでしょうけど、女神様ご夫婦のこともありますし、

 エルフだって頑張れるかなって」

「そっか。じゃ、私の友達のとこ行きましょ」

「私、ご迷惑でしたか?」

「違う違う。頼りになる子がいるの。あなたまだ、村に慣れてないでしょ」



私に仕事を任された、主神と美の神は、相談していたの。

「まさか君と組むとはな」

「お嫌ですか?」

「母神様の決定に、驚いただけだ」

「私は、規律も秩序もあまり重視しないですからね」

「そうだな。男の件だが、奇跡で気力を回復させ、

 教団で信仰生活をさせるのはどうだ」

「世俗を捨てるわけですか」

「不満か」

「いえ、主神ならその一択でしょう。ですから、私もここにいるのです」

「君ならどうする」

「死なせません。しかし、彼が喪失を通して、何か1つでも美を、

 それはささやかなことでいいのです――

 朝露に濡れた花でも、水たまりに映る月でも、どこにでもある美――

 それに気がつくまで、休ませ、そして苦しませます」

「苦しんで、気がつくものなのか?」

「彼の持ち時間で気づけ無くても、喪失と共に生きた彼のことは、

 私が責任を持って受け入れましょう」

「私が規律や秩序を愛するように、君が美を愛することは理解する。

 しかし、そこまで苦しめるのは、残酷ではないのか?」

「主神の奇跡でちゃっちゃと気力を回復ことは、

 残酷ではないのですか?」

「ふむ。どちらも残酷であるなら、君の考えで行こう」

「よろしいんですね」

「私は、頭が固いからな。柔軟な君のやり方を見てみたい」


美の神は、どこにでもいる人間の男の姿になり、生きるのを諦めかけている男の所へ行きました。1人で暮らすには広すぎる家と、営業を続けられなくなった店だけが男に残されていました。財産は、ほぼ全て奪われたのですね。


美の神は男に「店を売ってくれないか」と頼みました。

男は応じました。一等地の店を売れば、彼が余生を送るには十分です。


主神は王都の教団で、教団長に他国の民である男の境遇を説明しました。教団長は豊穣神の教団と連携し、男の身の回りの世話をできるよう、手配しました。

(主神は、信仰に関する話や布教・伝道は行わないことを命じました)


男の第二の人生ですか? 美を感じる余裕はまだありません。世話をしてくれる主神や豊穣神の信者達と、穏やかに世間話を少しするのが、今は精一杯ですね。

順調に苦しんでいる。美の神ならそう言うでしょう。

私は、2柱からの報告を受け、満足しました。未来も見えますからね。

(財産を奪った者ですか? すでに捕まり、人の手で裁きを受けました)



一方で、叡智の女神は18歳で学院に入学した少年、つまりに降臨しました。場所は学院寮、学院生達は寝静まっています。


「起きなさい、可愛い息子」

「叡智の女神様?」

「あなたと話がしたくて、来ました」

「光栄です」

「学院への入学おめでとう。よく励みましたね」

「ありがとうございます」

「あなたは幼い日から欠かさずに『今日も皆が幸せでいられるように』と

 祈ってきましたね」

「はい」

「あなたにとっての『皆』とは、どの範囲なのかしら」

「女神様は全てご存知でいらっしゃるのに?」

「あなたの言葉で聞きたいの」

「家族・友など、私に関わりのある人はもちろん、他国の人であれ、

 エルフや亜人であれ、全ての命あるもの達です。それこそ、猫や牛も含みます」

「その高い志、嬉しく思います。でもね、聴きなさい息子」

「はい」

「あなたはその高い志に耐えられるだけ、己を鍛えねばなりません」

「励みます」

「悲しいけど、どれほど鍛えても人には限界があるの。

 あなたは、あなたの限界とどう向き合いますか?」

「……考えたことがありませんでした」

「では、私からの課題です。あなたは一生を通じて、その課題に取り組み、

 いつか寿命を終えたら、私に報告なさい」

「はい、女神様。いつの日か、あなたの前に胸を張って立ちます」

来るのですよ。学びなさい、励みなさい、

 そして、得た力で、あなたの人生を愛しなさい」


叡智の女神が介入したことで、少年の人生は変わります。彼は処刑されることなく、その優しさを活かし、彼の限界の範囲で最善を行うでしょう。

私は、叡智の女神からの報告に、満足しました。



お母様は、泣き止んだ陽の君を連れて、小町の母様のお宅へ伺いました。小町の母様のご主人は留守ね。今日は村の衆の相談も少ないのかな?


「――というわけなのよ」

「陽の君さんは、焦りすぎかな?」

「はい」

「陽の君ちゃん。この人は、これまで受けた恋愛相談の数とんでもないからね?

 私の友達であり、信頼する神官です。小町魔王、お願いしていい?」

「ええ、女神様。末の神さんには『覚悟しろ』って伝えてちょうだい」

「やだ怖い」

「うふふ」


お母様は、村の様子を眺めて楽しみながら、家へ帰ってきます。

こうして見ると、人間の基準なら18歳くらいの小柄な女の子に見えるわ。

私と並ぶと妹に見えるのも、仕方ないわよね。


で、小町の母様と陽の君の話に戻しますね。

「あなたも、やっかいな朴念仁を好きになりましたね」

「はい。困っちゃいました」

「女神様ご夫婦と話してどうでした?」

「羨ましい・悔しいしか浮かばねえし」

「本音漏れてるゾ」

「?」

「当たり前だけど、あなたが追いかけるから逃げるのは分かるよね?」

「むー」

「でも、追いかけさせる方法は分からないのでしょ」

「はい」

「彼が今、追いかけている物はなあに」

「お仕事です」

「彼はあなたのことをどう思ってる?」

「分かりません」

「たぶん、末の神は、あなたの求愛を本気にしてません。

 あなたのこと、子どもだと思ってるから」

「むー」

「彼が、仕事してる場合じゃなくなるくらい、心をかき乱すにはどうしたらいい?」

「神族って精霊魔法通用しますか?」

「効かないわよ。私ですら、抵抗できますから」

「心の精霊を使わずに、かき乱す……」

「歌姫・華の君・女神様・私、4人は味方が出来たでしょ」

「え?」

「武神も、あなたの恋を認めているわよ。これで5人」

「ほんとう?」

「末の神があなたのこと、子ども扱いして油断している内に、

 あなたの恋を応援してくれる人、増やそう?」

「はい」

「末の神は賢者さんにも頭上がらないし、村長さんにもお世話になってますからね。

 味方にすること」

「はいっ」

「この村の衆は、読書もするけど、娯楽少ないからね。誰かの恋は娯楽なの。

 女衆も男衆も、仲良くなって味方につけなさい。最強の味方だからね?」

「がんばります」

「そして、ベタベタするのは禁止。でも、彼の視界の端をちょろちょろすること」

「ちょろちょろ?」

「うんうん。目があって微笑むだけでいいの。挨拶するだけでいいの。

 あなたが村の暮らしを楽しんでいる姿を見せてあげなさい」

「気にして下さるかしら」

「末の神は、のつもりで、あなたを必ず見守ります。

 爪を研ぎなさい。時が来たら、その声で彼にトドメを刺すのだから」

「今すぐトドメ刺しちゃる」

「本音でてるよー」

「?」

「あなたは、押すばっかで上手くいってないの。試してご覧なさいな」



小町の母様と話して、陽の君は変わったの。

半歩くらい今までより叔父様から距離を置いたかな。叔父様は彼女の気持ちが収まったのかと誤解したわ。陽の君が村の暮らしを楽しむ様子を、他の村の衆を大切に見守るのと同じように、見守っているわ。


陽の君の恋はまだ叶っていない。でも、彼女の味方は着実に増えています。

もしかして、この村に、叔父様の味方って居ないんじゃない?

エルフって『歌』と共に生きるでしょ。村を歩けば、自然と歌を歌うわよね。

村の子達が、「エルフの姉ちゃん、お歌聴かせて」ってせがむようになったの。


あの子の美声で、優しい歌が村に途切れることなく、流れています。

私でも聞き惚れることあるのよ。

叔父様にとっては、伝説のセイレーンより危険よねえ?

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