されど邪神は月に笑う
@yuzuremo
第1話
仄暗い闇の中、彼女だけは光輝いて見えた。
その晩、街の風景は絵画の如く平坦で、どこか現実感がなかった。
丘の30cm上には月があり、画面の端から端まで民家が連なる。民家の連なりは丘の高さと同じ高さまで届き、連なりの端は月まで届く。魚眼レンズで街を仰ぎ見た様な絵だ。抽象的でありながら写実的、1m先から見ているが、その絵に迷い込んだ、体から知覚だけが抜け落ち頭の後ろから自分を操作している。まるでゲームみたいだ。
しばらく、その感覚を楽しんでいると月が肥大化し、歪んでいく。細胞分裂の様にボコボコと増えていき、こちらにゆっくりと迫りながら落ちてくる。眼前に迫る頃にはそれは人の形になり、ふわりと地面に降り立った。
月から降りてきたのは白く輝く髪持つ少女だった。その少女はまるで月から生まれ落ちた、そういう風合いだった。
少女はこちらに手を伸ばし頬にふれてきた。微笑みかけ、口を開き、言葉を紡ぐ。
「貴方、は、私のものになってくれる?」
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