お父さん「理不尽です、とてもとても理不尽です」

 咲人は独り地団駄を踏みながら誰かに愚痴るように呻いていた。


「由美さん……これはあまりに理不尽です」

「娘から若い女性との肉体関係を追及されました……!」

「おまけに、否定したらやれやれですって! やれやれって……」

「とてもとても理不尽だと思います」

「お父さんの情操教育が間違っていたのでしょうか? 由美さん」


 そんなことを繰り返してから咲人は空を仰いだ。

――ああ、なんてことだ!

 単純なショックもある。

 だが、それ以上に――娘の追及に咲人の顔は真っ赤になっていた。

 丹湖門咲人。六十歳。歳にして耳順じじゅん

 しかし、異世界にあって未だ不惑ふわくに至れない。

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