アマ〇ンexプライム②

 『三十三階級の認可を確認。荷物の転送が開始できます』

 

 パソコンの画面が切り替わると、えみは机の上でスティック状の機械を起動する。exプライム会員なるものに登録した後にすぐ自宅へ届いた妙な文様の描かれたデバイスのボタンを押す。


 「三十三階級の認可を確認。荷物の転送を開始します」


 女性の合成音声がデバイスから発せられる。


 「セフィロトのスタンバイ。ケテル、コクマー、ビナー、ケセド。

  ゲブラー、ティフェレト、ネツァク、ホド……イェソド、マルクト……

  セフィロト、スタンバイ」 


 聞きなれない横文字をつらつらと合成音声が読み上げる。

 

  プロビデンス 起動

  トリニティ  展開

  ウロボロス  解放


 デバイスを中心に机の上に紫の光が広がる。

 光は輝きを増し文様が描かれる。


 初めに瞳の形。

 その周りを囲むように三角形が出現。

 さらに外周に蛇の文様が表れる。


 光の線が図形を描き切るころには部屋中に光が溢れかえっている。

 無音の室内で瀑布にでも飲み込まれてたかのような錯覚に彼女はおちいる。


 「システム、オールスタンバイ。G.A.T.E. 起動」


 その言葉を引き金に光は収束する。

 デバイスの前方に青白い光の円が出来上がった。

 

 「よろしくね……?」


 えみは柄にもなくおずおすといった調子で光のなかへ段ボールを沈めていく。

 

 「…………」

 

 やがて段ボールは姿を消し、光の円も霧散していく。

 こうして彼女の用意した荷物は異世界の父の元へと送り届けられる。

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