藍空で君は舞う
李宮さん
時の歯車
見慣れた住宅街、空の色、澄んだ空気。何も変わってないはずのこの街に異質の鉄塔が立ち並んでいた。先程の地震で気を失っていた間に一瞬で”現れた”ようにも感じたが、今目の前にある現実はもうとっくの昔からあるかのようなそんな気さえしていた。
女「あの、すいません」
どこから聞こえたのか、後ろを振り返ると僕と同じく倒れ込んでいた女の子が話しかけていた。血で滲んだ足がなんとも痛々しい。
女「今の地震……大丈夫でした…か?私のカバン持っていたはずなんですけど地震の揺れでどっかやっちゃったみたいで……」
ああ、なるほど。と、思いもう1度周りを見渡して違和感を感じた。この状況はおかしい。今、この女の子と俺が異常な自体に巻き込まれていることは決定的だった。
先程地震起こった時、周りには少なからず人はいた。しかし、周りにはこの女の子以外誰ひとりとしていなくなっていた。
気を失っていたからだろうと携帯で時間を確認してみたが、あれから数分程度しか経っていない。
焦る気持ちを抑えつつも周りを見渡していると、その女の子のいうカバンとやらが電柱のそばに落ちているのを見つけた。
男「はい、これ」
女「あっ、ありがとうございます」
男「あ うん」
ここで、もう一つおかしなことに気がついて耳を澄ました。
男「静かすぎないか…………?」
かなりデカイ地震があったのに何故こんなに静かなんだ。少しは周りの住民達が騒いでてもおかしくないだろ……。
女「なんだか、さっきまでの地震が嘘だったみたいですね」
男「夢でも見てたのかもしれない」
女「ありえないと思いますけど…」
女「ていうか、あの、あんな鉄の棒みたいな建物……ありましたっけ?」
男「それは俺も思ったよ。でもたった数分であんな鉄塔がいくつも作れるほど日本の技術は優れてない」
女「そ、そうですよね……」
男「ほんとに、どうなってんだか」
この時の俺達はまだ知る由もなかった。
運命の歯車によって導かれた、存在する”もう一つの世界”の可能性を______________________
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