目が開かない

 キツい天然パーマの女の子が泣いている。


 目が開かない。目が開かない。――と、泣きじゃくっている。

 母親が必死で女の子の目元を拭いている。


 わたしはソレを、少し離れた部屋の隅っこで眺めている。


 天然パーマの女の子は、わたし。

 濡らしたガーゼで目を拭いている母親は、わたしの母。


 わたしが3歳位の頃の出来事らしい。


 でも、わたしはソレを少し離れたところから他人事のように眺めている。


 目ヤニがひどくて、目が開かなかったらしい。

 その後の記憶はない。

 目の手術をしたことがあると聞かされても、その奇妙な光景と結びつかなかった。

 やっと結びついた頃には、母の病気がひどくなっていて、詳しいことを尋ねることができなかった。


 思えば、この目の手術がキッカケだったのかもしれない。


 ちなみに、この目の手術をしたN市のS田眼科を、斜視の手術の相談に訪れることになる。


 斜視の手術は断られてしまったが、おかげでこれらの奇妙な出来事の対策を講じるキッカケにはなった。

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