第5話 知りたい。

第5話


今日は授業が4時間だから早く帰れる……。

……寄り道…! なんだろ、とてもワクワクするな

前の私ならこんなことは無かったんだろうなぁ……。

今日の授業は不思議とだるくなかった

人と少しは関わろうって思ったからかな

ちゃんと人と話せばいい人だって思える人も居た


『桜井さんと話してみると意外と楽しい!

今まで関われなかったから話したことなかったけど……楽しいね』


関われなかった……?どういう事?それを聞こうとしたけど

聞くのが怖くて聞けなかった。

ほんと……記憶無くなる前の私はどんな子だったのかな

聞くのも怖いや……。


『この間なんて、ターゲットされてたもんね

桜井さん……あの時はごめんね?私達も手を出したらターゲットになっちゃうから……何も出来なくて……。』


……ターゲット?なにそれ……。

じゃあ、あのアザは?いじめとかの傷で虐待ではないの?

だとしたら……なんで父はあんなこと言ってたの?

何もしてないのなら……なんで記憶がなくてよかったって言うの

……いじめられてたことに気づいていて何も出来なかったから?

いや。いじめられていたとしても記憶なくなって良かったなんて

言う親がいるかな。


『……ねぇ。私のことをいじめてた人ってどの人?』


こうなったら直接聞くしかない。

私がどのようないじめにあってたのか

そして、いじめてた人はどんな人なのか。自分のこともちゃんと

知っておきたい。人のことを知る前に自分のことを知らなきゃ

ダメな気がする……

だからその為にも。私をいじめてた本人に聞きに行かないと。


『桜井さんをいじめてた子は……今学校に来てないよ?

いじめを先生にバレたから今は自宅待機中だよ。』


……自宅待機か。いつ学校に来るかわかんないよね

どうしよ……今日は芹沢くんと放課後寄り道する約束だしなぁ。

んー、芹沢くんに相談……しようかな。

そう思ってたら丁度、芹沢くんがこっちに来た


『ん?あぁ。別にいいよ?一緒に行こうか』


一緒に来てくれるんだ。やっぱいい人かも……

少しだけ。ほんの少しだけ好感度みたいの上がったな

放課後。2人でカフェで色んなことを話したりしてすごく楽しかった

それで、5時頃になったからそろそろ私のことをいじめてた子の

家に行こうって話して、2人で一緒に私をいじめてた成瀬さんの家に

行った。インターホンを鳴らしたらすぐ成瀬さんのお母さんが出てきた


『あ……の。私、桜井未来って言います。え…と。成瀬さんの同じクラスなんですけど。少し成瀬さんに聞きたいことがありまして……』


成瀬さんのお母さんの顔が少し変わってた。

私の名前を出した瞬間に。

驚いたような顔してて、私なにかしたかなって思ってたりした。

すると、成瀬さんのお母さんがどうぞって家に入れてくれた

玄関で靴を脱いでると成瀬さんのお母さんが私の顔をずっと

見てきててなんかすごく嫌な感じがしてた。

……私って嫌な感じになるの多いよなぁとか思ったりしてた


『……桜井未来さん。ごめんなさい……。私の娘のせいで事故にあっちゃって。全部……全部私の娘のせい……で』


どうして……この人が泣いてるんだろう。

泣きたいのは私だよ。だって、事故にあったせいで記憶まで無くなってて

それで皆のこと覚えてなくて。それのせいで芹沢くんは悲しそうな

顔してて…

泣きたいのはこっちだよ……。


『……いえ。大丈夫です。私は気にしてませんよ』


私は笑顔で答えた。成瀬さんのお母さんは安心したような顔してる

成瀬さんのお母さんは親切に、2階の部屋まで案内してくれた。

……正直記憶ないから成瀬さんの顔も声も知らない。

だからある意味初対面なんだよね。

怖いけど……隣に芹沢くんも居てくれるから不思議と安心する。


『……成瀬さん。桜井未来です……入っても平気ですか?』


成瀬さんはどうぞって言ってくれた

……聞くのが怖いけど自分の事も知らないとね。

そう思いながら成瀬さんの部屋のドアを開けた。

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