僕が地球を救うわけ

Tatsuya

エピソード1 始まり

「ちくしょう!」

「なんでこうなった?ユグドラシルのやつらはなにやってるんだ!」

突然の衝撃波からクラスのみんなを守り、龍之介は叫んでいた。

「俺はただの学生のはずなのに!」


数時間前、大学の講義を聴いていると、突然キャンパスの中央で誰かが叫んでいた。

全部で30人位はいるだろうか?


「これからこの大学はわれわれが占拠する」

「したがってもらえない場合、安全は保障しかねるので、大人しくしたがって欲しい」


何だなんだと物珍しく見ていると、学生からなる学園警備隊が出て行った。


この大学は、民間警備組織「ユグドラシル」が国と共同で運営し、今後にになう人材や、研究を行っている学園でもある。

それゆえ学園警備隊は、警察、軍隊、民間警備会社からすでにスカウトされているような強物ばかりだ。

なみの犯罪者では太刀打ち出来ないだろう。

彼らが対処に出たのを見て、俺は安心していた。


「何の用事か知らないが、授業の邪魔なので出て行ってもらおう。警告が聞けないのであれば、警察を呼ばせてもらうか、強制排除させてもらう」


突然現れた人物は

「穏便にすませたいのだが、そちらがその気ならしかたがないな」

そういうと、腕に装着していたものを目の前にかざすと、警備隊の1人が10メートルほど後方に飛ばされた。

それを見た瞬間、全員が身構え、一斉に攻撃態勢に入り、同じく腕に装着しているものをかざし、応戦している。


双方が腕に装着しているものは、パワードアーマーといい、簡単に言えば増強装置だ。

腕力はもちろん、精神(氣)最近解明された魔力も増幅する事により、さまざまな事に使用できる。

今のように精神波で相手を吹き飛ばしたり、防壁を作ったり、魔力で土、水、火、風、雷、を操る事が出来る。

誰でも使いこなせる訳ではなく、その人間の潜在能力によって変化する。

とはいえ危険なので、通常国の機関に申請し、許可を得た者しか装着を許されていない。

こちらの学園警備部は装備の許可を得て使用でき、訓練も積んでいるが、かなりてこずっている。

どうやら乗り込んできたやつはかなり使いこなせるようだ。


「やはり一筋縄ではいかないようだ、遠慮なく力を使わせてもらうぞ!」

乗り込んで来た一人が天に腕をかざし、神経を集中し始めると気圧が変わっていくのがわかった。


「やばい、でかい衝撃波を打つつもりだ。警備部のやつらじゃ防ぎきれない」


そういって窓に向かって走る龍之介をみて、クラスメイトが危ないから下がれと言ったが、4階にある教室から飛び降りた。

それを見ていた者は驚いたが、着地する瞬間風が舞い、問題なく地面に立った。


衝撃波を受け止めようとしているのは、警備部きっての天才「西園寺 綾香様」だ。

精神波テストではいつも「特S」という最高得点を出している完全無敵のお嬢様である。が、今相手が放とうとしているのはこれまで見た事がない位の規模なっている。

他の警備部の連中も逃げろと言っているが、気が強いのが災いして、引こうとしない。

「私が負ける訳ないわ、防いでみせる!」

「悪いが見せしめになってもらおう」

と冷たい声が響く。


凄まじい音と共に、うずを巻いた空気の断層のようなものが西園寺嬢の前に飛び、大きな爆風が起きる。

教室のガラスは割れ、周囲の塵や空の雲まで吹き飛んでいた。

全員が唖然としていると

「見せしめにしてもやりすぎだ、ロキ」

「すみませんマスター、ですがちょっとやそっとじゃ打ち破れない防壁を作っていたので、つい全力をだしてしまいました。」

「たしかにそうだな。だがこれで大人しくなってくれるだろう」

と、リーダーと思われる人物が言った瞬間

「てめえ、学園のお姫様にこんなことしてただで済むと思ってないだろうな?」

一同がまだ煙の引いていない場所をからの声に驚く。

そこには倒れている西園寺嬢の前に1人の男が立っていた。

両腕はボロボロになっていたが、「貴様あれを素手で防いだのか!?ありえん!」

次の瞬間、“ロキ”と呼ばれた人物は遠方に吹き飛ばされ、いや、ぶっとばされていた。

「誰だかしらねえが、そっちが引かないのなら、こちらも相応に対応させてもらう」


マスターと呼ばれた人物の回りにいつの間にか3人が立ちはだかっていた。

吹き飛ばされた”ロキ”とやらも、いつのまにか抱えられている。

「こいつ1人、自分達で片付けられます、マスターは目当ての物を手に入れてください。」

「いや、時間を食いすぎた、特殊部隊も駆けつけて来る頃だ、今日は一旦引くぞ」

と回りに言い聞かせたが、突然龍之介に拳を振りかざしてきた。

龍之介はそれを受け止めると、受け止めた拳の前に何か文字が書かれた円が出来ていた。


「やはり貴様が「クサナギ」の龍之介か!」

「うわさには聞いていたが、どうやらそのアンチマジックの技術は本当のようだな」

「われわれは、「ロンギヌス」世界を開放する者だ。覚えておけ」


そういって、大きなつむじ風を作り、姿を消した。

「“ロンギヌス”?なんだったんだあいつらは?たが俺の秘密を知っていた。調べる必要がありそうだな」


そんな事を思っていると、後ろに鬼の様な形相で、西園寺嬢が立っていた。

「突然出てきて余計な事をしないでくれる!私1人でもなんとかなったわ!」

「いやーそれはすまない事をしたね。今度はでしゃばらないようにするよ」

「それじゃ、急ぐから!」

「待ちなさい!名前を名乗りなさい!ちょっと!」

そんな言葉に耳を貸さず、龍之介はどこかに行ってしまった。

西園寺嬢を心配した生徒たちが周りを囲んでいた為、それ以上追えなかった。

だが、後ろを振り返ると自分の周りはとんでもない形で吹き飛ばされていた。

それを見て、西園寺嬢と生徒達は事の大きさに内心ゾクリとしていた。

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