Double devil②

「次は、誰だ?」


 並行世界の姉ちゃんは目を紅く輝かせて再び右手の人差し指をこの世界の姉ちゃんに向けた。


「おたくら、明日香ちゃんの身体を使って一体何をするつもり?」


「決まっているだろう。我々はこの身体の望み通り世界を一から作り直す」


 並行世界の姉ちゃんは何重にも重なる声でそう告げた。


「私は、私はそんなこと望んでない!」


 この世界の姉ちゃんは僕が今まで聞いて来た姉ちゃんの声の中で一番大きなボリュームで叫んだ。


「いいや、明日香ちゃん。君は確かに世界を破壊したいと望んでいる。だから今ボクチンはこうして君の願いを叶えてあげているじゃないか」


「おたくら、嘘はいけないよ。明日香ちゃんがそんな物騒なお願いするわけないでしょ」


 軽い口調でそう言い放ったタイジュさんだったが、僕の位置から見えるその背中からは簡単に収まる事の無い怒りが感じとれた。


「明日香様」


「観測者如きが我に命令するな。さて、タイジュと言ったか? 勇者もどきほどではないが、貴様の光は不愉快だ。貴様に恨みはないが消えろ」


 ビュンという風を切る音が一瞬聴こえ、数秒時間を置いて僕の頬を勢いのある風が撫でた。


「サーヤさん?」


 勢いのある風が僕の頬を撫でた時、サーヤさんと思われる小柄な女性が吹き飛ばされていたような気がした。


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