Double devil①
「我々の眠りを妨げるのは誰だ?」
重々しく威圧感のある声が突如として僕らのいるこの空間の空気を凍らせた。
「フフフ。明日香ちゃんいや、この世界を地獄へと帰る大魔王明日香様のお目覚めだぁ!」
「大魔王明日香? どういう事だ?」
「おやぁ? 懐かしい声が聞こえますねぇ。その威勢だけは良い声は私の宿敵と呼ぶには力足らずな勇者、クドルフ・カインではありませんか」
「その口調、まさか」
「そう、私は貴方が倒すはずだった魔王。
ほう、そいつが貴様の世界の勇者か。弱そうだ。
フッ、だろう?」
「言わせておけば!」
並行世界の姉ちゃんは今まで見たことがないほどに禍々しい雰囲気を纏いながらカインを挑発し、カインはまんまとその挑発に乗せられてしまっていた。
「カイン、逃げ……。
消えろ。勇者もどき」
並行世界の姉ちゃんはこの世界の
次の瞬間、頬の真横を何かが吹き飛ばされたような感覚を感じ、僕はふと背後を見た。
「カインくん!
カイン!
明日夢、カインが」
前を見直すと姉ちゃんも僕と同じように後ろを見ていて、サーヤさん、タイジュさん、姉ちゃんの順にカインの名を叫んでいた。
「姉ちゃんたち、カインに何があったの?」
「弟君には通常のマギレの姿が見えないようだからボクチンが懇切丁寧に教えてあげよう。勇者クドルフ・カインは今、大魔王明日香様の御力で明日香ちゃんの身体から弾き飛ばされたのさぁ」
「そんな。姉ちゃんたち、カインは? 今、カインはどうなっているの?」
「わからない。今の自分たちは明日香という器の中にいる魂だけの存在。器から出ればただの霊体だ。霊体になってしまうと物体をすり抜けてしまう。カインは物凄い力によって弾き出されてしまって……」
タイジュさんは言葉を詰まらせたが、大体わかった。カインは体育館の外まで弾き出されてしまったらしい。
「次は、誰だ?」
並行世界の姉ちゃんは目を紅く輝かせて再び右手の人差し指をこの世界の姉ちゃんに向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます