シンジツ

「私?」


「せいか~い! 今ここに居るのは明日香ちゃんだ。ただし、この明日香ちゃんは昨晩ボクチンと出会わなかった世界線の明日香ちゃんだけどなぁ!」


「並行世界の姉ちゃん?」


「今までボクチンの手では干渉できなかった並行世界からこの世界の明日香ちゃんと全く同じ能力を持つ明日香ちゃんを連れてこられたのは、闘士ツクモ・タイジュ。君のおかげだぁ。感謝しているよ」


 僕はゆっくりと首を動かして姉ちゃん……正確にはタイジュさんを見た。


「自分は、自分は何もしていない!」


「いいや、君はよくやってくれた。明日香ちゃんに大けがを負わせたことを悔やんでくれた。悔やんで、悔やんで、悔やんで、悔やんでぇ! 自分でも気が付かないうちにその生涯を終えた。そして、その思いが、その魂が現世に留まりこの世界にマギレた」


 そして、ハクジュはニヤリと微笑み、言葉を続けた。


「闘士ツクモ・タイジュ、君がこの世界にマギレたことでこの世界には並行世界に干渉することが出来る歪みが生まれた。この世界で明日香ちゃんを捕らえることは出来なかったが、並行世界の明日香ちゃんを捕らえることが出来た。偶然とはいえ君はボクチンの駒として良い働きをしてくれたぁ」


 ハクジュが高笑いをする中、姉ちゃんの手元を見ると両手は力強く握られ、小刻みに震えていた。


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