我の名は、④

「まぁ、お料理の話はいいや。次は明日夢」


「ひっ!」


 つい悲鳴を上げてしまった。


「いやだなぁ~ 姉弟きょうだい揃って怖がらないでよ~ 変なコトは聴いていないでしょ? それとも、聴かれたら困るようなコトでも隠しているのかな~?」



「そんなコトは」


 あるから困る。


「明日夢」


 そう僕の名前を呼んだのは魔王ではなく勇者、夏海ではなく姉ちゃんカインだった。


「夏海に隠しておく必要はねぇんじゃないか?」


「香ちゃん? だけど、香ちゃんじゃないよね?」


「俺は明日香だが明日香じゃない」


「言うつもりなの?」


「隠しておく必要もないだろう。


わたしもカインに賛成です。


真実は明日香、お前自身の口から告げろ。


良いだろう」


 姉ちゃんは大きく深呼吸をして言った。


「縫針夏海ィ! 何故我が最近いいにおいを漂わせるようになったのか、何故君が我から別の女の雰囲気を感じ取ったのか、何故男っぽい喋り方が聞こえたような気がしたのくわァ!」


 姉ちゃん、そのネタはそれ以上言うな!


「その答えはただ一つ……」


 そのネタはもうやめろー!


「アハァー……」



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