いたずら電話

「明日夢ぅ」


 珍しく僕の事を『我が半身』ではなく『明日夢』と名前で呼んだ姉ちゃんは目に涙を浮かべながら自分のスマートフォンを僕の耳に押し当てて来た。


「何? いきなりどうしたの?」


「その声は、明日夢か」


 どうやら通話中の状態だったらしいスマートフォンから突如聞こえて来たその声はボイスチェンジャーでも使っているのか不自然な機械音声だった。


「誰ですか? 誰なんです、あなた一体?」


「私に答える義務はない」


「どうして僕の名前を、姉ちゃんの電話番号を知っているんですか?」


「ただいま」


 僕の質問を無視したその声の主は一言そう告げると通話を一方的に終了した。


「非通知、誰だったんだろう?」


 姉ちゃんのスマートフォンの画面には『通話時間 5分55秒』の文字だけが残されていた。


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