第二羽 羽は戦火に包まれて
外の騒がしさに二人は同時に起きていた。
前日に騎士団を破門されたカムラと獣人の女の子であるミーシャと翌朝にこの街、アルテークを出る予定だった。
そのためカムラの家で寝ていた二人なのだが外が明るかったのだ。
二人が気づいて起きた時には既に辺りが火に包まれていたのだが
何が起きたのかさっぱりだった。 つい先程まで暗闇に包まれていたかと思えば
周りを炎が焼き尽くしているではないか。
「ね、カムラこれってどういうこと!? 」
「分からない。 分からないけど急いで家を出る支度をして!
この街から脱出する! 」
本当に何が起きてるのか分からなかった。
分からないから分からないなりに今出来る事は多分この街の脱出だと思った。
いくら大都市と言っても、 こんな都市全体が燃えるだなんて誰が予測出来ただろうか、 一体何が起きたというんだ。
激しい業火の中、 家のドアをノックする音が聞こえた。
声からして、 騎士団リーダー
エスファルト=タイガーである。
その声は本人そのものなのだが妙に息が上がってる。 彼ほどの男が息をあげるなんて。
「カムラ! いるか! いたら返事をしてくれ! 外が大変なことになってる! 力を貸してくれ! 」
急かすかのように彼は早々と話していく。
仕方なくドアを開けようと、
カムラがドアに手をかけようとした瞬間だった。
「開けちゃ駄目 ー!!! 」
後ろから大声でミーシャは叫んだ。
それで一瞬手が止まり後ろを振り返った。
「ミーシャ開けるなってどういうこと? 」
「分からない。 けどとてつもなく嫌な予感がする 」
「それだけじゃ分からないよ。 それに今は一刻を争うんだ。 人手は多いに越した
ことはないでしょ 」
僕らが話してるのを外で聞いてたのか、
タイガーは続けざまに言ってきた。
「おいカムラ! そこにもしかして、 あの娘もいるのか危険だ!
離れるんだ! 今すぐに! 」
――危険!? どういうことなんだ一体。
「早く俺らに渡すんだ! 」
――言ってることがめちゃくちゃだ。
カムラの考えをよそに扉が破壊されたが次の瞬間カムラは目を疑った。
何故ならタイガーは既に死んでいたのだ。
何故彼が動いているのに死んでいるのが分かるのか。
それは一目見ただけで分かる。
あるはずの部分に槍でも突かれたような後。
そう、彼には既に心臓が無かったのだ。
「何を怯えているカムラ。 ...あぁこれか、 これはな代償として支払ったんだよ。
お陰で永遠に生きられる不死の身体を手にいれた! ハハハハ。
アーハッハッハッハ。 今の私はすこぶる調子が良いのだ。 」
生まれてきて初めてカムラは恐怖を体験した
今まさに目の前にいる奴が怖くて仕方がない
「あなたは一体... 誰何ですか。 」
「笑える冗談だ。 タイガーに決まっているだろう。
私こそが騎士団長エスファルト=タイガーだ! いいからその娘を渡せー! 」
ハッ! としてミーシャの方を見ると彼女は既に
タイガーに向かって魔法を使っていた。
【風の
風の塊が蛇のようにうねってタイガーを外へと飛ばす。
信じられない。あの巨体を飛ばすなんて。
ミーシャはカムラの方を見ると一言。
「...臆病者 」
その言葉を残しミーシャは外へとでた。
それに続くようにカムラもまたミーシャへと続く。
外へ出てようやく今の状況が理解出来た。
堕天使が民家を襲っているではないか。
それも数にして50。 数にしてみれば対して居ないようにも見えるが、 彼等は一人一人が町を一つ滅ぼせる力を持つ。
幹部クラスになれば国すら危うい。 目の前で女子供は連れ去られ抵抗した者は
その場で殺される。
惨たらしい光景に目を背けたくなる。
助けたいのに、 身体に力がはいらない。
先程のタイガーの姿にすっかり身体が怯えてしまっていたのだ。
頭では動こうとしても身体が無意識にそれを拒む。
(何が騎士団のエースだ。 肝心なとこで何一つ出来やしない。 )
目の前で次々と人が殺されていく。
-やめて。お願い殺さないで... アァアアァア!!
-嫌だ死にたくない死にたくない死にたくな... い。
-アァアアァア痛い痛い痛い! 身体が、 身体が千切れ....
一人また一人と次々に人は残虐極まりない死を遂げる。
加え堕天使共は遊ぶように皆をなぶり殺していく。
こんなのもうたくさんだ。
「...しもし。 ...えてますか 」
――何でこんなことに...
「もしもーし! 聞こえてますか! てかさっさとシャキッとしろ! 」
バチーンと勢い良く頬を叩かれて、ようやく周りが見えた。
目の前には獣人の女の子のミーシャがいた。
「いててて。 ようやく我にかえった? 人間のくせに手間取らせないでくんないかな? ったく失望しきった顔して目の前にいた私にすら気づかないなんて。 」
「...ミーシャ?? 」
「そうだけど? なに? 」
ミーシャが生きていたカムラにとってそれが今は救いだった。
「そう、 安堵の顔されても困るんだけど。 それに残念なお知らせが二つ 」
「残念な? 」
「一つ。 この都市は見捨てなければならない 」
「なっ!? 何を言って! 」
「理由は単純。 こちらは二人に対してあちらは50とても勝てる要素がない。それ に連れてかれた人達についても追い付く術はないし、ここをあいつらに占拠されるのも時間の問題ってわけ 」
「でも! だからって! 」
「助けに行くわけ? さっきまで震えて呆然としてたやつが何言ってるの?
少しは状況を考えて! 」
悔しいけど何も言い返せなかった。
確かに彼女の言うとおり、 俺は何一つとして動けていない。
「それに二つ目だけど... 」
「いてぇじゃねーかー! カームラー! 」
「とても私たちを逃がしてくれる気が無いやつがいるから、
周りを見てる余裕がないってこと! 」
彼女が指を指す方向を見ると、 顔面半分流血してて明らかに身体の腐食が進んでるタイガーの姿がそこにはあり
大都市アルテークは、 業火に包まれた。
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