おっさん、宝箱を開けてみた!

 万全?の装備をホームセンターで揃えて、洞窟に再度潜る事になった俺。

 俺のクローゼットに入っていたパンツは、どこに消えた?

 

 片手にランタン、頭にヘッドライトを装備したおかげで、昨日の懐中電灯一本の心もとない明るさとは違って、目も眩む程の明るさ。

 ランタンを買った後で思ったんだけど、海外ドラマによくに出てくる、棍棒代わりになる長い懐中電灯を買えば良かったな。

 懐中電灯を頭の横に据えて照らしつつ、敵が出てきたらガツンと振り下ろすワイルドさにおっさん憧れてます。

 

 洞窟を歩いてて思った事。

 なんか、昨日と洞窟の様子が違う。

 昨日は洞窟を抜けた後に、延々と一直線の通路が続いてたけど、今日は短い岩肌の洞窟を抜けるとすぐに目の前に石造りの広いフロアが鎮座している。

 大広間ってやつだ。

 所々に噴水が有ったりと、どこぞの神殿の様な感じ。

 明らかに昨日と洞窟の様子が違う。

 これはもしかして、〇思議のダンジョンとかそんな感じの、入る度に様子の変わる洞窟なのか?

 そんな神殿風の部屋の中に、凄いものを見つけた。

 金色の金属装飾で縁取りが施された赤い箱。

 どう見ても宝箱っぽいオーラを放つ物体だ。

 ゲームの宝箱って言えば解るだろうか?

 そんな物が目の前の床に置かれていた。

 それも二つもだ!

 

「なんだこりゃ?」


 宝箱に決まってるだろうが!

 一人寂しく心の中で一人ツッコミをした後、開錠作業開始。

 宝箱のフタを開けようと思っても、鍵が掛かってるのか開かない。

 そりゃ宝箱だもんな。

 金庫みたいなもんだもん。

 簡単に開いていいなら、わざわざ鍵付きの宝箱に入れずに、押入れ収納ボックスに入れといてもいいしな。

 家に帰ってマイナスドライバーでも持ってくるか。

 蓋の隙間にドライバをねじ込んでハンマーで叩きこめば、鍵が外れて開く気がする。

 よし戻ろう。

 家に戻ってドライバーを手にすると、再び宝箱の前に戻って来た。

 宝箱のフタの隙間に強引にマイナスドライバーをねじ込んで、ドライバの尻をハンマーでガコン!と叩き込んでやる。

 予想通り宝箱は勢いよく蓋を開いた。

 

 ──ちゃららん♪

 

 と、心の中で自作の効果音を付けて中身を確認すると、中に入っていたのは小さな指輪。

 銀色いや白金色のリングに綺麗な装飾が施された指輪だ。

 指輪には小さな赤い宝石が埋め込まれている。

 そんな指輪が、宝箱の真ん中にポツンと入っていた。

 アクセサリとかファッションとかには疎いんでよく解らないけど、安物じゃないのはこのおっさんの俺でもよくわかる。

 パッと見、この辺りに持ち主がいなさそうだし、貰っちゃっていいよな?

 貰っちゃうよ?

 貰っちゃえ!


 ――おっさんは指輪をゲットした!


 これをリサイクルショップに持ち込めば一万円、ひょっとすると一〇万円位になるかもしれないぞ!

 今月分の家賃位になるかもしれない。

 思わぬ臨時収入に舞い踊る俺。

 そういや指輪なんて手にするのは生まれて初めてだな。

 婚活を始めようと思った時、婚約指輪は月収の三か月分の値段と聞いて『そんな高いもん買えるか! ボケ!』と買うのを躊躇った記憶。

 結婚指輪は月収の三か月分と言う話は、宝石会社が作ったデマらしい。

 なので、最近は日常でも付けっぱなしで生活のできる、この指輪みたいなシンプルな指輪が流行との事。

 いつか俺もいい人見つけて、この薬指に婚約指輪をはめたいぜ!

 と、言いつつ拾った指輪を薬指に嵌める俺。

 薬指に嵌めた指輪がキラリと輝く。

 これで、婚約指輪バージン卒業だぜ!

 うひひひ!

 うひひ!

 ……。

 あーあ……。

 こんなこと一人でやってる俺、なんかむなしい。

 一瞬で冷めて素に戻ったので、指輪をポケットにしまう。

 しまおうとしたんだ。

 しまおうとしたんだよ!

 うげ!

 抜けん!

 まじか!

 指輪が抜けなくなった!

 指輪が指に食い込んでぬけん!

 引っ張っても、回しても、押してもびくともしない!

 って押したらダメだな。

 でも、それぐらい指輪は俺の指にガッシリとハマって、取れなかった。

 おっさんの太い指とサイズが合って無かったのか!?

 抜けねーよ!

 どうしよ!

 家に戻って石鹸でもサラダ油でも何でもいいから、塗りたくってでも取らないと!

 薬指に指輪嵌めてたままじゃ、既婚者扱いされて婚活絶対に無理!

 早く取らないと!

 よし、もう一個の宝箱も開けて、とっとと部屋に戻ろう。

 俺はドライバをねじ込み、もう一つの宝箱も開く。

 

 ――ででで、でーん♪


 中に入ってたのは……。

 水晶玉の玉。

 直径二〇センチメートルぐらいの、割と大きめの水晶玉だった。

 これ売れるのかな?

 とりあえず手にはしたけど、水晶玉って占い師以外は使わないよな?

 透き通ってて綺麗な事は綺麗なんだけど、水晶って確かガラスとあんまり変わらない値段だったはずだよな。

 さすがに、こんな洞窟の中の宝箱に高価なアクセサリが二個も入ってる訳ないよな。

 買い取ってくれる店もなさそうだし、ゴミになりそうだから持って帰るのやめるかな?

 でもまあ、ネットオークションに出したら物好きが買ってくれるかもしれないし、一応持って帰るだけは持って帰るか。

 俺は、価値が有るのかないのか解らない水晶玉を抱えて、部屋に戻る事にした。

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